【日本Sを読み解く】ソフトバンク「勝たせなかった」5回表の2得点 “ゴロゴー”で作り続けた二、三塁の好機
福岡ソフトバンクホークスと広島東洋カープによる「SMBC日本シリーズ2018」第1戦が27日、マツダスタジアムで行われ、延長12回の末に2-2で引き分けた。32年ぶりのシリーズ初戦ドローとなった勝負のポイントはどこにあったのだろうか。
2018/10/28
「先の塁を取る意識」が生んだ同点劇
ソフトバンクの村松有人三塁ベースコーチはいう。
「三塁走者はホームに向かっていい場面。その中で、1死一、二塁を取るか、二、三塁にするかということです。走者は最低限、バッターランナーを生かすということができていたのでよかったと思います。基本的な走塁だとは思うんですけど、前の走者はしっかり粘る、後ろのランナーはしっかり塁を詰める、先の塁をしっかり取るというのができていた」
こういうプレーにこそソフトバンクの強さがあるのだと思う。
当たり前の走塁であるけど、それを怠らない。ただ一人の個人が頑張るのではなく、前の走者の粘りになんとか先の塁を取っていこうと考える。少しでも次打者にとってやりやすい局面で迎えられるようにというのが徹底できているのだ。
この場面では記録だけを見れば、送球がそれたことによる「タイムリーエラー」での得点である。「ミスに乗じた」と考えてしまいがちだが、相手がミスをしても、得点が入らないこともある。なぜ、ミスで得点が入ったのか。その局面を作り出しているからに他ならないのだ。
5回表で同点となると、このまま12回まで試合は動かなかった。両チームの投手陣の粘りには唸らされるものはあったが、そう思うほどに、5回表の攻防はこの試合のポイントだった。
ソフトバンクの当たり前のプレーであるけれども、それを怠らなかった。2点ビハインドで始まった試合を「勝たせなかった」ということである。
とはいえ、両者に優劣がついたわけではない。まだ、第1戦が終わったばかりでもある。
延長12回引き分けの中で、ソフトバンクは武田翔太投手ら3人のリリーバーが2イニングを投げている。一方の広島はヘロニモ・フランスア投手一人を除いては、小刻みな継投でうまくやりくりをしていた。そうした面も含めて、この日の試合がどう作用して行くかはこれから次第だろう。
第2戦はどう動くのか、初戦から熱戦を見せてくれただけに、楽しみは増すばかりだ。