【日本Sを読み解く】すべてが覆った第3戦。地力みせたソフトB打線の意識、追い詰めた広島の収穫とは
「SMBC日本シリーズ2018」第3戦が30日、ヤフオクドームで行われ、福岡ソフトバンクホークスが9-8で勝利。1勝1敗1分のタイに戻した。広島の猛追をなんとか振り切ったソフトバンク。この試合の勝負のポイントはどこにあったのだろうか。
2018/10/31
結果につながった変化球への意識
先制打の中村はこう語る。
「(広島の投手陣は)きれいなストレートがない感じで、イメージでいうと外国人投手のようなピッチングをしてくる投手が多いなと。1打席目はツーシームを打たされたんですけど、(2打席目の適時打は)変化をつけてくるという意識でバッターボックスに立っていました」
2点目の適時打を放った今宮も同じだった。「ほとんどストレートを投げてこないですね」と話し、さらにこう続けた。
「シュートやツーシームを投げてきて、ストレートはほとんど来ないなというのは感じました。打席の中でどう対応していくのかを考えていました。(広島の投手陣は)打者が合っていないなと思ったら、その球ばかり投げてきます。こっちとしては、勝負をかけるところはかけていかないといけなかった」
今宮はナックルカーブの後のスライダーを打った。「変化球が多かった。甘いところに来たら仕留めていきたいという思いがあった」という適時打だった。
5回裏にも好機をつかんだソフトバンク打線は、2得点を挙げ、九里を攻略した。そして、6回裏に投手がパワーピッチングをしてくる岡田明丈に変わると、ソフトバンク打線がいつもの地力を見せた。
2死から、明石、グラシアルの連打で好機を作ると、柳田の内野安打で1点を追加。デスパイネが岡田のストレートを完璧に捉えて右翼スタンドに放り込む3ラン本塁打とした。
ソフトバンク打線に制球力がアバウトなパワーピッチャーは通用しない。150キロ台の投手が多くいるパ・リーグ投手陣を打ち崩してきているのだ。カウントが有利な時は、154キロのストレートをばんばん投げてくる岡田だが、制球を意識して少し腕の振りをゆるくした途端につかまった。
ストレートをほとんど投げてこない九里を打ち崩し、変わって投入された岡田を粉砕。ソフトバンク打線の強さをまざまざと見せつけたと言ってよかった。
藤本博史打撃コーチは「うちには優秀な選手がそろっている」と胸を張る。
「今日の投手は、ツーシーム、スライダー、カット、フォークを両サイドに投げてきたけど、(広島は)揺さぶってくる投手が多いよね。特にインコースを意識させて、アウトコース勝負とか、当たり前なんだけど、それを徹底している。その中で試合に出ている選手たちが自分で考えて打席には入れている。試合前に対策は言いますけど、試合の中で変わってくるところもある。変化球が多いなとか感じて打席に入っているのが結果につながった」
ここまでなら“ソフトバンクの第3戦”となっていたはずだった。しかし、広島がそうさせないところに、このシリーズの面白みは増した。
6点ビハインドの8回表、先頭の鈴木誠也がこの日2本目の本塁打を左翼スタンドに放り込むと、打線が活気付いた。
1死後、バティスタが左前安打で出塁すると、野間峻祥は四球、會澤翼が中前安打で続いて満塁とする。そして、9番・安部友裕が右翼スタンドに飛び込むグランドスラムを放ったのだ。安部はこの日2本目のホームランだった。
口火を切った鈴木、繋いだ下位打線の選手、大仕事をやった安部。1点差まで詰め寄った猛反撃が凄まじかったのは間違いないが、この攻撃に何より価値を感じるのは、打ち崩した相手投手がソフトバンクのセットアッパー・加治屋蓮だったことだ。