広島の機動力封じる“甲斐キャノン”。1.8秒台、脅威のスローイングに隠されたもう一つの秘密
プロ野球の「SMBC日本シリーズ2018」はここまで4戦を終え、福岡ソフトバンクホークスが2勝1敗1分とした。広島東洋カープの機動力をことごとく封じているのは、強肩・甲斐拓也捕手の存在だ。
2018/11/01
間一髪でも勝負にいける制球力
「(甲斐の)スローイングが良いのは低いところから伸びてくるところですね。そして、コントロールにばらつきがないんで、ラインにボールが乗っているのでタッチしやすい。間一髪の時も勝負に行ける」
ストップウオッチを手にしていると、数字ばかりにとらわれてしまうが、甲斐の制球力は必見だ。
どれだけスローイングタイムが良くても、少しの高さがあるだけもロスになる。間一髪であれば、ときに、送球から目を切って、ギャンブル的にタッチしにいかなければいけないからだ。遊撃手が弾いてしまうシーンを見たことがあると思うが、それは受け取ったボールとタッチまでの距離が遠いために起きてしまうのだ。
甲斐のスローイングで記憶しているビッグプレーがある。
クライマックスシリーズ(CS)ファイナル第5戦で埼玉西武ライオンズ・秋山翔吾を刺したプレーだ。リプレー検証にまでなったほどで、この試合の勝負を分けた場面だった。
今季リーグトップの132盗塁をマークした西武は盗塁のスペシャリストが集っている。今季の彼らのストロングポイントにもなっていたが、第5戦の5回裏、甲斐の肩が唸った。
西田が当時を振り返る。
「遊撃手は一塁走者のスタートが見えるんですけど、秋山さんがスタートを切った時は(アウトは)無理やなと思いました。そしたら、低い弾道でスーときたんで勝負したんですけど、タッチしやすかったです。タイミングは同時やったんで、アウトやなと」
西武ベンチはリクエストしたが、検証の結果、アウト判定は変わらなかった。
「ピッチャーのおかげです」
甲斐はいつも、謙虚にそう語る。
盗塁阻止という作業が自分1人ではできるものではないからとわかっているからだ。実際、盗塁のスペシャリストたちが口をそろえるのは「捕手の肩より、ピッチャーのクイック」だ。
だが、その一般常識を覆してしまいたくなるくらいに、“甲斐キャノン”は脅威となっている。
氏原英明