【日本Sを読み解く】第5戦に感じた両指揮官の執念。後先考えない継投策、采配に応えたソフトBナイン
「SMBC日本シリーズ2018」第5戦が1日、ヤフオクドームで行われ、福岡ソフトバンクホークスが5-4で広島東洋カープにサヨナラ勝ち。本拠地3連勝でついに2年連続日本一に王手をかけた。1点の攻防が繰り広げられたこの試合の勝負のポイントはどこにあったのだろうか。
2018/11/02
経験から短期決戦の采配を理解しているソフトバンク
この勝利に感じるのは、指揮官の後先を考えないほどの勝ちにこだわった采配に、実直に答え、結果を残していくソフトバンクナインの内面の強さだ。
最初に思い起こすのは、4回裏、犠打を決めた内川の姿だ。
キャプテンの内心はどうだったのか。
「打席に行く前に、監督に呼ばれたんですけど、当然の作戦だろうなと。(今季の自分は)1年間きっちり試合に出て、3割を打ってというバッターじゃなかったですし、実際に、このシリーズでも打っていなかったですからね。チームのためになる。その最善策の一番がバントだったと自分では割り切っているところがあったし、慌てることもなく決めることができてよかった」
もっとも、前倒しされていく継投策にも、選手たちは感じることがあったのではないか。
7回裏に同点弾を放った明石は、試合終盤のメンタリティーをこう語る。
「(継投いついて)僕の方からどうこう思うことはないですけど、感じることがあるとすれば、レギュラーシーズンとは明らかには違うなということですかね。それだけ勝ちに貪欲っていうか。裏目にでるときもあるし、ハマるときもあると思いますが、どんどん投手を変えると言うのは、勝ちにすごくこだわっているのだなと」
明石の話を聞いて思うのは、短期決戦になるとこうした采配はよくあることを経験から理解しているということだ。
例えば、経験のないチームが、指揮官の思い切った采配に、その思いを感じてしまって、気持ちが空回りしてしまうことも往往にしてあるだろう。だが、ソフトバンクは何年もそうした修羅場をくぐり抜けてきている。
短期決戦を戦う気持ちの持ちようが整理されていると言えよう。
内川は言う。
「(采配や早い継投策を)選手がどう感じるかと言われると、プレーしているときはベンチの中で何が起こっているのかはわからないですから、監督が出てきて、コーチが出てきて交代なんだなと気づくだけで、最高指揮官の監督が決めたことに対して、僕らはしっかりやらなきゃいけないと思う。
ただ、千賀が4回2/3で交代して、モイネロが登板したり、8回から森が登板したりというのは普段ではない事が起こっているということだし、それだけ短期決戦で勝つ気持ちの現れだと思う。みんなが頑張っている姿がチーム全員の気持を一つにする要因ではあリます。チーム全員が勝って広島に行きたいと絶対に思っていたことなので、それが果たせたのはよかった」
結果が出たから、工藤監督の采配は肯定される。
勝負とはそういうものだ。「勝てば官軍、負ければ賊軍」というのだから…。
だが、そうした采配に応えるかのように、無類の勝負強さを発揮するのが、ソフトバンクだというのも、また、事実なのである。
氏原英明