すべてが王者だった。下克上似合わぬソフトバンク、アスリートの“軸”感じた立ち居振る舞い【日本S総括】
プロ野球日本シリーズは3日、福岡ソフトバンクホークスの2連覇で幕を閉じた。シリーズ開幕前は、パ・リーグ2位のソフトバンクに対し、セ・リーグ3連覇の広島東洋カープにやや分があるかとも思われた。だが、終わってみれば、ソフトバンクが第3戦から4連勝で一気に勝負を決めた。経験、選手層の厚さなど、強さの要因は様々だが、グラウンド以外にも「王者」の風格を見せていた。
2018/11/05
甲子園の決勝戦に見る取材対応、大舞台を神格化する効果
舞台が神聖化されるという意味では、甲子園の決勝戦の舞台づくりも見事である。
準決勝戦が終わると、決勝戦進出チームの宿舎にて前日取材が行われるし、試合当日には、準決勝までとは別な空気感の中で、試合前の取材時間をもうけている。
「甲子園の決勝」という舞台に対して、メディア含めて多くが敬意を示していて、独特の空気を作っているのだ。
日本シリーズには、残念ながら、そうした準備はされていない。
毎試合ごとの勝利監督インタビューはある。だが、例えば、国際大会のように勝っても負けても両チームの監督が会見場に呼ばれるというようなことはない。シーズン中のように取材は進められていく。違ったことといえば、記者席への入出制限がかかり、媒体によってはスタンド観戦用のチケットが必要になるくらいだ。
日本シリーズの舞台づくりをしないNPBの怠慢を強く感じているが、今後、検討していってもらいたいと思う。
こういった日本シリーズの取材環境は今に始まったことではない。長く続いてきたことで、つまり、日本シリーズの取材環境は各球団の裁量となっていくというわけだ。
ソフトバンクは日本シリーズに何度も出場しているから、この舞台がどういうものであるかをかなり理解しているのだと思う。
選手の立場からすれば、試合後は話したくないときもあるはずだ。
第5戦の試合後、無死一、二塁の好機でバントのサインを命じられた内川聖一内野手にぶら下がり取材をした。悔しい思いを態度に出すことなく、誠実に対応した姿勢には感激した。
内川に代表されるように、ソフトバンクの選手たちは、ホームであっても、ビジターであっても、質問を投げかければ、丁寧に答えてくれるのだ。
5戦目を終えた後の移動日、ヤフオクドームでは、翌日の先発が濃厚だったバンデンハーク、さらにもつれれば、第7戦の先発の可能性があったミランダが取材に応じた。工藤監督もベンチ内で囲み取材を受けた。
もっとも、ソフトバンクの選手たちほどのプレーの説明責任は限られた選手からしか行えなかった広島サイドを問題視しているわけではない。
ソフトバンクの選手たちの姿勢が、たくさんの修羅場を潜り抜け、王者に君臨してきたアスリートのメンタリティーを備えていると感じるのだ。