すべてが王者だった。下克上似合わぬソフトバンク、アスリートの“軸”感じた立ち居振る舞い【日本S総括】
プロ野球日本シリーズは3日、福岡ソフトバンクホークスの2連覇で幕を閉じた。シリーズ開幕前は、パ・リーグ2位のソフトバンクに対し、セ・リーグ3連覇の広島東洋カープにやや分があるかとも思われた。だが、終わってみれば、ソフトバンクが第3戦から4連勝で一気に勝負を決めた。経験、選手層の厚さなど、強さの要因は様々だが、グラウンド以外にも「王者」の風格を見せていた。
2018/11/05
変化しつつある日本プロ野球界の取材姿勢
かつて、ニューヨーク・メッツに所属した際、記者から人柄を評価された選手に贈られる「グッドガイ賞」を受賞した吉井理人氏(現ロッテコーチ)がこんな話をしていたことがある。
「(MLBでは)マスコミへの対応に関する講習会があり、立ち居振る舞いなども含めてファンやメディアへの基本的な対応からすべてを教えられます。その内容は“行儀よくしなさい”というのはもちろんなんですけど、プレーに対して試合後に話すところまでが選手の仕事だと言われましたね。自分が応じている取材の先には多くにファンがいるんだよ、と。だから僕は、打たれても抑えても必ず記者の前に出ていって喋っていました。MLBでは日本みたいに調子が悪かったら記者を避けるとか、ノーコメントを貫いたりというようなことはまずないですね。
考えてみたら当たり前のことなんですけど、マスコミに出てナンボってところがあるのに、そこで『調子が悪かったらからコメントはありません』という態度をとるのは、仕事を放棄しているようなものなんです。もちろん、MLBにも変な選手も時にはいます。でも、そういう選手は叩かれます。アメリカは選手側もメディア側もプロなのだと思います。選手の評価基準がしっかりしているので、(メジャーの選手が)世間からリスペクトされる理由になっているんじゃないでしょうか。日本も早くそうなってほしいですよね」
日本の各球団の選手たちの姿勢は、以前に比べると変わってきていると思う。球団の広報がしっかりと選手を先導していて、声の発信を大事にするようになった。だが、取材姿勢はただ指導するだけではなく、アスリートとしてどうあるべきかという「軸」が最後には表に出てくるのではないか。
このシリーズにおけるソフトバンクはさすがの強さを見せた。日本シリーズ連覇の要因はたくさんある。
だが、それらは全てをひとまとめにするとこう言える。
ソフトバンクには何から何まで「王者」だった。 彼らに「下克上」は似合わない。
氏原英明