大谷&中田で華のある「平成のON砲」誕生 アベック弾にウキウキ感が止まらない!【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#3】
4月22日の西武プリンスドームの西武×日本ハム戦、4回表に3番大谷翔平、4番中田翔が連続ホームランを放ち、スタンドを沸かせた。ただの二者連続ホームランではアベックホームランにはならない。誰しもが認める華が必要なのだ。
2015/05/01
アベックホームランと言わせる条件
記録を調べると大谷、中田のアベック弾は過去3度目のようだ。いささか因縁めくのはこの日(4月22日)が中田の誕生日だったこと。実は最初にアベック弾が飛び出した2014年7月5日のロッテ戦は大谷の誕生日だった。それじゃ2度目の同年8月12日は誰の誕生日かめっちゃ気になるが、徳川家光や東幹久、貴乃花光司が浮かび上がった。強いて日本ハムから探すと紺田敏正コーチの誕生日。
しかし、アベックホームランという昭和っぽい響きはどうだろう。「アベック」とはフランス語の前置詞「avec」(と一緒に。英語のwithに相当する)から来ている。転じてカップルを指す用語になった。つまり、何だかよくわからない和製外国語だ。「アベックホームラン」ではフランス語+英語がでたらめに連結されている。
ただウキウキ感はものすごく表現されているんじゃないか。もう、顔が半笑いだ。めっちゃうれしい。それはカップルを前にして、うひゃあ~、みたいな本来の意味合いにおいても浮かれているし、アベックホームランの派手なシーンにおいても浮かれているし、あと熊本の「アベックラーメン」(五木食品の定番ラーメン)の2食入りに関しても浮かれている。
そのウキウキ感を真正面から受け止め、一歩も引くことのなかった戦後プロ野球のスーパースターが王貞治、長嶋茂雄の「ON砲」だ。誰にアベックホームランの呼称が似つかわしいって「ON砲」以上の存在はいない。とびきり華がある。打者としてタイプが違う。「平成のON砲」は大谷、中田のイニシャルを取って、当代プロ野球でいちばん華があるというニュアンスが込められている。
スケールが大きくないとダメなのだ。ファイターズには大野奨太、中島卓也と打順が並びそうな「ON」がいるが、偶然、2人がホームランを打ってもアベック感は薄い。歴代、アベック感が出せていたコンビというと、どうだろうカープの山本浩二、衣笠祥雄、ライオンズの清原和博、秋山幸二かなぁ。阪神のバース、掛布、岡田は3人なので別のカテゴリーに属する。
プロ野球にはやっぱりアベック感がほしい。西武プリンスドームで大谷、中田の競演を見た感想はそれに尽きる。試合の勝ち負けなどどうでもよくなって、ただホームランに酔うような幸福感。あれから1週間以上たったけど、まだ余韻にひたっている。
”新平成の名勝負”森友哉対大谷翔平 90年代半ば生まれの野球ドラマの幕開け【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#4】
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えのきどいちろう
コラムニスト。1959年、秋田市生まれ。中央大学経済学部卒。在学中の1980年、『宝島』にて商業誌デビュー、以後フリー。朝日新聞、読売新聞、『サンデー毎日』、『週刊文春』等々、膨大な数の紙誌に連載を持つ。またラジオのパーソナリティーとして文化放送、TBSラジオに出演。球団創設以来のファンターズファンとして知られ、北海道新聞に連載「がんばれファイターズ!」を持つ。野球関係の著書に『F党宣言!』(河出書房新社)