出足好調のヤクルト・日本ハム、広島・オリックスのつまずきの要因【小宮山悟の眼】
千葉ロッテ、さらにはニューヨーク・メッツでプレーし、現在プロ野球解説者・評論家の小宮山悟氏の連載。プロ野球が開幕してから約1カ月が経過した。今回は、開幕1カ月診断として両リーグの戦況を主要チームの戦いぶりを中心に分析してみた。
2015/05/03
中日の奮闘が光る、優勝候補の広島は?
セリーグでもっとも驚かされたのは、中日の奮闘だ。「接戦になったら試合を落とさない」という谷繁監督の目指す野球ができている。負傷離脱した森野には気の毒だが、オープン戦で絶好調だった福田を代役として起用できたこともプラスに作用した。
こういう新旧交代劇はプロ野球界では起こる。81年、巨人のサード中畑さんが戦列を離れた際、セカンドから原さんがコンバートされ、そのセカンドには前年のレギュラーの篠塚さんが復帰した。そして、チームに戻った中畑さんが以降、サードではなくファーストで起用されたというのは有名な話だ。
もちろん、今回の中日の場合、新旧交代が完成したわけではない。復帰した森野が再びレギュラーの座に就くかもしれないし、逆に福田が、森野が復帰しても外せないほどの成績を残し続けるかもしれない。福田がレギュラーに定着できるか。今季の中日の見どころの一つだ。
さて、そんな好調なチームとは逆に、前評判倒れの状態になってしまっているチームといえば広島だろう。とにかく点が取れない。しかし、個人的には広島の戦いぶりをそれほど心配はしていない。攻撃力が弱いことは、元からわかっていたこと。状態が悪すぎることは確かだが、この貧打状態がシーズンの終わりまで続くとも考えられない。爆発するとは言わないが、そのうちに普通に点の入る攻撃陣になるのではないか。
エルドレッドの長期離脱が判明した際、すぐさまシャーホルツ獲得に動いたことからも、球団の今季にかける本気が伺える。
そして何より、投手陣が評判通りのパフォーマンスを披露している点が心強い。今の投球内容を続けられれば、そのうちに打線の状態が戻って結果もついてくるだろう。個人的には、まだ優勝の目も十分に残っていると睨んでいる。
今季はここまでセパ両リーグとも混戦模様が続いている。選手の立場ではなく、球界OB立場で言わせてもらえば、こんな状況がシーズン終盤まで続いてほしいと思う。8月末までどのチームにも、クライマックスシリーズ進出の可能性が残る大接戦。そんな盛り上がりのあるペナントレースになることを希望している。
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小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。