制度廃止も揺るがぬベイスターズの礎。高田GMが三原球団代表へ伝えた、背広組の心得
横浜DeNAベイスターズの誕生以来、編成面においては高田繁ゼネラルマネージャー(GM)主導で行われてきた。その高田GMが今季限りで退任。来季はGM制を廃止して、三原一晃球団代表を中心にこれまでの役割を引き継いでいく。三原球団代表に、これからの決意と来季に向けた戦力補強についてお話を伺った。
2018/12/03
高田GMの下で何を学んだのか
「たぶん人生で一番緊張したと思います。手が震えて封筒の中のカードが出てこず、慌てましたから」
横浜DeNAベイスターズの三原一晃球団代表は、苦笑を浮かべながら今年のドラフト会議を振り返る。
小園海斗(報徳学園)を1位指名したDeNAだったが抽選で外してしまい、上茶谷大河(東洋大)を再指名した。ヤクルトとの2球団による抽選、高田繁ゼネラルマネージャー(GM)に代わって登壇したのは三原代表だった。初の大役に肝が縮む思いではあったが、見事にくじを引き当て交渉権を獲得した。
「一番喜んでくれたのが高田GMでした。あそこで2回連続して外してしまうのと引き当てるのでは、その後の指名戦略が随分と変わってしまいます。ホッとしました」
2011年12月にDeNA体制となったベイスターズは、以来、高田GMを中心としてチーム作りを行い、昨季は6年目にして日本シリーズに進出した。ドラフトを中心とした編成を推し進め、選手層は間違いなく厚くなり、戦う集団へと成長した。
しかし7年目を終えた今季限りで高田GMは退任を決断。ひとつの時代が終了した。
今後は球団としてGMのポストを置かない体制を敷くことになるが、この理由について三原代表は以下のように語る。
「GM制で成り立っていたチームですし、当然次のGMを誰にするか検討もしたのですが、高田GMの後任となると仕事の難しさもあり該当者がなかなかいなかったのが実情です。そこで我々は話し合いの末、永続的にGM制度を続けていくのは難しいと判断し、今回GM制度をなくし、組織としてすべてに対応していこうということになりました」
今後は高田GMの役割を三原代表が中心となって引き継いでいく。プロ野球出身ではないが、球団代表に就任して丸2年、高田GMと行動をともにし、あらゆるチームの案件について相談、対応、決断をしてきた。高田GMは三原代表について「この2年間、一緒に試合を見て、チームの作り方、選手の見方などを話してきました。私と価値観は一緒ですから心配はしていない」と語っている。
三原代表が高田GMから学んだことで一番印象深かったのは、ユニフォームではなくスーツを着ている人間の心得だという。
「超えてはいけない線というものをしっかりと学ばせてもらいました。選手との関わり合い方、監督やコーチとのコミュニケーション。現場はルールと規律によって動いているので、その場においてスーツを着た人間がやっていいこといけないことを丁寧に教えていただきました」
プレーヤーと指導者、そしてフロントとしての経験が豊富な高田GMならではの知見は現在のDeNAベイスターズの礎になっているといっても過言ではない。
「高田GMほどチームと球団の両方を深く理解している人はいませんでした。そこが代わりのGMを置くことのできない理由でもあります」