【プロ野球2018年総括】ゴールデンルーキー根尾・藤原の加入でさらなる競争を。今季は躍進への布石<中日・ロッテ>
2018/12/21
千葉ロッテマリーンズ
結果的には“育成元年”のシーズンとなったが、開幕当初からの戦いは決して悪くはなかった。“走塁革命”をキャンプのうちから掲げ、就任1年目の井口資仁監督の船出は、納得いくものではあった。
ただ、序盤のスタートが悪くなかっただけに、もう少し奮闘できたのではないかと思ってしまう。なかでも、荻野貴司が死球による骨折で離脱してからの転落は、もう少し踏ん張って欲しかった。
それでも、シーズン途中に、日本ハムから岡大海を緊急補強。競合の末に獲得したドラフト1位を差し出してまでチームの穴を埋めようとする編成方針は至極納得のいくものだった。だが、今季から三塁にコンバートした鈴木大地の調子が上がりきらず、長年の懸案事項となっている長距離砲が井上晴哉しか見込めなかったのは、「走塁革命」だけに終始した苦しい戦いを象徴していると言えるかもしれない。
その中での光明はやはり、3、4番を形成した中村奨吾と井上だ。もともと、ルーキーからレギュラーを獲得してもおかしくない2人だったが、前政権では今一つ元気がなかった。特に、器用なタイプの中村は、多くのことが打席で求められ、本来のスタイルを見失っていた印象だ。それが井口監督の就任で「セカンド」と「3番」に固定。指揮官の期待にモチベーションを高く維持した中村は意気揚々と1年間を過ごすことができた。
井口監督の中には、中村のポジションを固定することで、彼本来の力を引き出したいという狙いがあったのだろう。荻野が離脱してトップバッター探しに窮しながら、安易に中村の1番起用をほとんどしなかったのも、彼の能力をまず発揮させたいという狙いが見えた。中村はゴールデングラブ賞を獲得し、シーズン150安打をマーク。シーズンの最後まで盗塁王のタイトルを争った経験は大きいだろう。
昨季まではレギュラーと呼べる選手が少なかったが、今季は中村と井上を固定できたことで、来季以降チームとしてどう戦うかの青写真が見えてきたはずだ。怪我がなければ、1番をずっと務めていたはずの荻野、正捕手をつかんだ田村龍弘など、チームの骨格はできた。
一方の投手陣は、防御率が示しているように、いまひとつだと言わざるを得ない。昨季は4勝と苦しんだ石川歩が復調の兆しを見せたものの、エース涌井秀章はクオリティスタート(QS)率こそ良かったが、7勝9敗と負け越し。獅子奮迅のシーズンになるはずの二木康太は4勝止まりだったのは残念だ。
だが、暗い話ばかりではない。ファームから上がってきた2年目の種市篤暉やトミー・ジョン手術からの復活を遂げた岩下大輝らがポテンシャルの高さを見せ、中堅の唐川侑己にボールの勢いが戻ってきた。先発に転向した有吉優樹など右投手を中心に期待を抱かせる。
来季は、ゴールデンルーキーの藤原恭大が、層の薄い外野戦線に競争のスイッチを入れてくれるだろう。清田育宏らの巻き返しも見たいところ。2年目の安田尚憲も期待は高まる。投手陣ではジャパンを経験しまくってきた成田翔、ルーキー東妻勇輔、小島和哉などブルペン陣に厚みを加えてくれるだろう。
氏原英明