さらばレアード。打棒もキャラも育てた、栗山ファイターズの粘り強さ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#92】
レアードの退団が正式に決定した。チームメイトやファンに愛された「人気者」が遂にファイターズを去る。
2018/12/26
日本球界に適応できた理由
で、実際、1年目は交流戦の6月頃まで打率1割台だった。僕は球場でセのファンから「レアードは安パイ」とヤジられていたのを覚えている。まぁ、ちょっと打撃のいいセの投手ならレアードくらいの打率は残せそうだった。が、栗山英樹監督は頑として下位で使い続けた。現場はレアードの順応性を見抜いていたのだ。日本の投手の攻め方に慣らす期間だった。夏以降、レアードのバットは火を噴く。結局、1年目から34本、97打点残したから文句のない戦力だ(反対にハーミッダは.211、1本、18打点で戦力外になる)。
あそこでガマンできるのが栗山ファイターズの強みだと思う。普通の球団だったら2軍に落としてクサらせてしまい、あっさりお払い箱だ。それくらい1年目の春、レアードは望み薄だった。だが時間はかかっても、柔軟性があって研究心旺盛な外国人選手はいずれ日本野球にアジャストする。人間だから性格もあるし、長所も短所もある。レアードは日本野球を吸収し、成長する選手だった。翌2016年は39本打って、ホームラン王だ。
ファイターズの現場は彼のキャラも育てた。「スシポーズ」は札幌市内の寿司屋へ白井一幸コーチが連れて行き、ご主人との約束が契機となったものだが、そもそもは「打席でリラックスしよう」という意味で、サードコーチの白井さんがスシポーズのサインを送ったのが最初だ。そうしたらホームランが出たので、次には「ホームラン打て」のサイン(?)になった。だから本来はレアードではなく、白井コーチが「握る」ものだったのだ。それをレアード本人が気に入って、自分のトレードマークにした。SNS上でファンはレアードのホームランを一貫二貫……、と数えた。
キャリアのハイライト、2016年日本シリーズでは第6戦の満塁弾をふくむ3本のホームランを放った。日本シリーズMVPはファンの誇りだ。あの年の日本一は大谷翔平の大活躍で語られるが、レアードの果たした役割はとても大きかった。
お子さんが生まれたそうだから、アメリカへ生活環境を移す機会なんだろうか。寂しくなる。さらば、ありがとうレアード! 次のチームでもじゃんじゃんスシを握ってくれ。いつか引退したらLAかどこかに本当に寿司店を出してほしい。みんな、絶対食べに行くよ。
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