【プロ野球2018年総括】“辻野球”の真髄は2番源田。主力流出の2球団、来季踏ん張れるか<広島・西武>
2018/12/28
埼玉西武ライオンズ
開幕から一度も首位を明け渡すことなく、そのままペナントレースを走りきった。高い攻撃力を武器にした10年ぶりのリーグ制覇だった。
防御率がリーグ最低ながら打ちまくったが、何よりの強さは「得点力」の高さだ。
浅村栄斗や山川穂高に代表されるように、豪快なスイングが持ち味でもあるが、見落としてはいけないのは攻撃の多彩さだ。リーグトップの盗塁数を誇る一方、犠打は少なく足を駆使した強力打線といえよう。
チームのカギを握ったのは2番の源田壮亮だった。1番の秋山翔吾からクリーンアップにつなぐ役目として、送りバントという古典的な攻めではなく、たくさんの幅を生み出したのが源田だった。秋山の出塁を殺すことなく、拡大させることで3番・浅村につないだ。塁に出てもリーグ3位の盗塁数を誇りながら、時には浅村の打席を助ける仕掛けを塁上で何度も見せていた。
おそらく、源田のような選手を作り上げたのが、「辻野球」の真髄と言えるのだろう。ただ打つだけではない得点を生み出す潤滑油的存在こそ、今季のライオンズには欠かせなかった。
4番に定着した山川の打棒も圧巻だった昨季シーズン途中からレギュラーの座をつかんだが、今季は勝負の年になるという中で、相手の研究にも考えすぎることなく、振り抜いた。安打、本塁打、打点など全ての数字で前年の倍以上の数値を残す活躍ぶり。明るい性格も手伝って、彼の活躍はチームを盛り上げた。リーグMVPは文句なしの選出だ。
ベテランの活躍も見逃せない。栗山巧と中村剛也は、スタメンを約束されない立場に置かれながらも、体調を整えて、勝負どころで力を発揮した。ここ一番に強かった栗山、チームの調子が下降線を辿りはじめた8月に月間MVPを獲得した中村の活躍なくして、この優勝はなかった。
一方の投手陣は野上亮磨、牧田和久が抜けた穴を感じさせながらもスタッフ全員で乗り切った印象だ。
エースの菊池雄星は開幕から故障を抱えて5月に登録抹消されたが、先頭に立つことで、若手のホープ多和田真三郎のブレークを引き出した。多和田は、防御率こそ3点台後半だったが、強力打線に支えられ「勝つこと」を意識するピッチングで、リーグ最多の16勝を挙げ、初のタイトルを獲得した。
移籍の榎田大樹、小川龍也、シーズン途中に獲得したマーティンやヒースが獅子奮迅の活躍を見せて、なんとかしのぎぎ切った。
クライマックスシリーズ(CS)ではファイナルステージで敗退。投手陣がゲームを作りきれず、それを補うことができなかった。短期決戦を戦えるほどの選手層でなかったわけだが、その課題は来シーズン以降のチーム全体の課題となるだろう。
シーズンオフ、浅村、炭谷銀仁朗のFA移籍が決定し、菊池のメジャー挑戦が確実視され、来季は大きな戦力ダウンとなるのは確かだ。しかし、FAの人的補償で巨人から内海哲也が加入するなど、また、新たな血が入ることによる化学変化も生まれる。
移籍での戦力ダウンは痛いが、ポジションが空いた事には間違いない。そこで出場機会を誰が得ていくのか。競争の原理が働いたとき、また新たなスターが誕生するはずだ。
氏原英明