大谷翔平、球速170キロも可能 恵まれた体格をフルに活かす身体的センス
プロの第一線で活躍する選手たちは、どのように体を動かしてピッチングやバッティングのフォームを構築し、結果を残しているのか。そのメカニズムを探るべく、筑波大学硬式野球部の監督で、投球や打撃フォームについて独自の解析・研究を行っている、筑波大学体育系准教授の川村卓さんに話を聞いた。第2回となる今回は、北海道日本ハムファイターズの大谷翔平にスポットを当てる。プロ3年目ながら、二刀流で結果を残す若き才能のポテンシャルとは――。
2015/05/11
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上腕の外旋から内旋の角度は驚異の132度
あれだけの大きな体を上手に使いこなしていることがそもそも驚きであり、160キロを超えるボールを投げられるポイントだと思います。これまでも身長190cmを超える体格に恵まれた日本人投手は多くいましたが、体をうまく使えているとはいえないのが実情でした。
なかでも際立っているのが柔軟性です。特に肩甲骨周りの柔軟性は飛び抜けたものがあります。
まずは、肩甲骨が特殊な骨であることから説明しなければなりません。その他の骨は、骨同士が靭帯などでつながった状態で動いているのですが、肩甲骨だけは「筋肉の上に乗った形」でついています。つまり、肩甲骨はその筋肉がよく動けば動くほど可動域が広がり、柔軟に使うことができるのです。肩甲骨そのものを意識的に動かすことはとても難しいのですが、大谷選手は非常にスムーズに動かせています。
その結果、腕の“しなり”が他の選手よりもよく効き、速いボールを投げられています。
また、速いボールを投げるためには、ヒジから先の上腕を大きくスピーディーに使えなければいけません。つまり、ヒジから先を内側に向かって動かす「内旋」の動きと、外側に向かって動かす「外旋」の動きがポイントになってきます。
外旋の動きによって、ヒジから先の部分が後方にいけばいくほど腕の“しなり”が大きくなり、内旋の動きが速くなればなるほど、ボールにスピードとパワーを加えられるのです。
この力が、大谷選手はずば抜けています。ひとつの指標となるのが、ボールを投げる際に外旋から内旋の動きによって生まれる、「腕のしなりの角度」です。150キロ以上の速球を投げるピッチャーの平均が100度ほどですが、大谷選手の場合は130度を超える場合があります。田中将大投手(ニューヨーク・ヤンキース)で115度前後ですから、大谷選手の腕のしなりが、どれだけ優れているかが分かっていただけると思います。
そして、このような腕のしなりを生んでいるのが、柔軟性に富んだ大谷選手の肉体なのです。