「練習は嘘をつかない」新井貴浩が若手に示す、古き良きカープ魂
開幕スタートダッシュに失敗した広島。4番のエルドレッドやグスマンが故障で離脱し、現在4番を任されるのは、今季広島に復帰したベテラン・新井だ。その新井が結果を残している。38歳の活躍は、チームに何をもたらすのか。
2015/05/09
「ホント夢みたい」
まさか38歳のベテランが主砲になろうとは鯉党も想像できなかったに違いない。広島の新井貴浩が4番として奮闘を続けている。8日現在で打率.294。得点圏打率も.391で規定打席にこそ到達していないが、これらの数字は賞賛に値すると言っていいだろう。
多くの評論家からレギュラー奪取は厳しいと見られていたものの、大方の予想を覆して一塁の定位置を見事につかみ取った。右ヒザ手術を受けたブラッド・エルドレッドと左わき腹を痛めたヘスス・グスマンの戦列復帰が徐々に近づいていることで、首脳陣としては今後の新井の起用法は確かに悩ましいところではある。
それでも“うれしい悲鳴”であることは間違いない。いい意味で想定外だった38歳のベテランの活躍は、最下位に沈むチームにとって数少ない好材料となっている。
本拠地マツダスタジアムで行われた5月4日からの巨人3連戦。全3試合に4番として先発出場した新井は12打数7安打7打点の大暴れで今季初の同一カード3連勝に大きく貢献し、5日には移籍後初めてお立ち台にも立った。
「ホント夢みたい」
万雷の拍手と歓声が交錯する中、ヒーローインタビューを受けた新井がマイクを向けられて思わず発したコメントは、心からの本音であったと思う。
正直に言って、これだけの活躍を予想していた方はどれくらいいるだろうか。
筆者も開幕前から三塁のレギュラーを目指すべく、原点に立ちかえろうと自らに猛特訓を課す姿を見て「オーバーワークになるんじゃないか」と懸念していた1人である。
沖縄キャンプでは連日に渡って居残り特守を受け、永田利則一軍総合コーチからノックの雨あられを浴び続けた。長い時には実に2時間弱。汗と泥にまみれながら終盤になると疲労困憊の余り、フラフラになってただ闇雲にボールを追う。まるで新人のように自分の体をイジメ抜いてシゴき、終わるといつもボロ雑巾のようになって宿舎に戻る新井に違和感を覚えていた。