立身出世の鍵は“盗塁王” 数より率が求められる時代、変わりゆく盗塁の意義と変遷
2019/01/21
盗塁失敗を糧にさらにスケールの大きな選手へ
常に戦術が見直される野球において、盗塁死で好機を潰してしまうことは良しとされないだろう。だが、若手の台頭に、盗塁王のタイトルが一役買っているのは確かだ。
1990年の野村(成功率58.9%)や、93年の石井(同60%)、2012、13年の大島(同65.3%)と丸(同65.9%)らを見ると、成功率の低さがチームに悪影響を及ぼしているとは言い難い。選手個人にとっては大きな財産となり、4選手とも翌年以降の率向上につなげている。足で名を上げて、レギュラーに定着し、打撃技術を洗練させていくという流れがあるのだ。
また、昨季リーグ優勝を果たした2球団は、広島東洋カープが95盗塁、埼玉西武ライオンズが132盗塁で、ともにリーグトップの数字。しかし、広島の盗塁成功率は66%で、決して高い率ではない。広島とは対照的に、阪神タイガースは、成功率78.6%を誇るが、リーグ最下位に沈んだ。
阪神に関して言えば、昨季ファーム日本一に輝いた2軍は、115試合で163盗塁を決めている。2019シーズンは、1軍監督に就任した矢野燿大監督がどこまで若手に挑戦を促せるかが鍵となりそうだ。昨季1軍の舞台でチーム2位の19盗塁、成功率90.5%をマークした植田海の飛躍にも期待がかかる。
ほかにも、「2018日米野球」エキシビションマッチでランニングホームランを記録して話題を呼んだ巨人・松原聖弥は、昨季24盗塁(54.5%)を決め、粗削りながらもリーグ屈指の脚力を披露。原辰徳監督に“のびのび野球”を「最も実行している」と言わしめた自慢の足を武器に、大舞台でのチャンスをつかんだ。来季は1軍に定着し先達に続けるか、注目の逸材だ。
盗塁成功率は良いに越したことはない。だが、若手にとっては、失敗に臆すことなく、貪欲に次の塁を狙う姿勢こそ、大打者への第一歩といえるのではないか。2019シーズンは、若く活気あるプレーに期待したい。