”ムラのある投手からの脱却へ”十亀剣、笑顔なき完投勝利の理由【中島大輔 One~この1球をクローズアップ】
昨年までは好不調の波が激しく、ムラのある投手というイメージの強かった十亀剣が、今季安定感ある投球を見せている。ライオンズの先発ローテーションの一角として首位争いに貢献。苦い経験を踏まえて、着実に成長を遂げている一方で、まだまだ本人は納得していない。今回は、5月5日のオリックス・バファローズ戦8回無死で迎えたT-岡田の打席、カウント1-0からの1球をクローズアップする。
2015/05/11
時間をかけてでも、悪いなりに最少失点に抑える
自分がエースの座に近づくためには、どうすればいいのか。十亀の目に、その答えはすでに見えている。
「調子が悪いのは仕方ないので、悪いなりに最少失点に抑えることですね。あとは『ストライクをとりたい。ストライクとりたい』と、どんどん投げ込んじゃっていたので、時間をかけてでも最少失点に抑える。去年の途中、『中継ぎや抑えで覚えたことをやれてきたかな』とは思っていました」
5月5日のオリックス戦に先発した十亀は、決して状態がよくなかった。立ち上がりからコントロールがバラつき、ストレートの球威も普段より劣っている。被安打6、与四死球4と、初回から9回まで毎回ランナーを許した。普段より登板間隔が1日少ない、中5日で先発した影響があったのかもしれない。
だが終わってみれば、球数は112球。先発完投できるほど、いいペースで投げていた。果たして本人は、マウンドでどう感じていたのだろうか?
「もっと投げていると思っていたんですけど、意外に球数が少なくて。中継ぎを休ませることが僕と昨日投げた菊池(雄星)の目標だと思っていたので、うまく完投できたことはよかったなと思います」
「もっと投げている」と思ったということは、「マウンドに長くいた」と感じていたのではないだろうか。つまり、焦らず、時間をかけて、塁に出したランナーを返さず、ベンチに戻ってくることができた。
調子の悪いときの十亀にとって、ある意味で理想的なピッチングをすることができたのだ。T-岡田にホームランを打たれた、8回までは。
「ゼロが続いていることは見てもわかりますし、まずは完投することを目標に挙げていたので。そのなかで完封も視野にできたと思うので、したかった思いはあります。あの一発を次に活かせるようにしたいと思います」
悪いなりにどうすれば勝てるのか、完封という最高の結果まで目前に迫った。自分は着実に前進しているという実感はつかめたものの、最後の詰めが甘かった。それが、笑顔なき完投勝利の理由だった。
今季は股関節の不安を抱えたスタートだったが、5月5日までに5試合に登板して3勝1敗、防御率2.06。目指すゴールに向けて、2011年ドラフト1位で入団した右腕は前へと歩いている。
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