プロの捕手はまず「打者」のどこを見る?【里崎智也の里ズバッ! #02】
今季から野球解説者として各方面で活躍する里崎智也氏が、その経験に裏打ちされた自身の「捕手論」を語る新連載。第2回の今回は、“扇の要”として、野手では唯一、味方のほうを向いて守備に就く特異なポジションである、捕手ならではの「視点」に迫ります。
2015/05/12
Getty Images
キャッチャーの知られざる「悩み」とは!?
ところで、グラウンドで唯一、野手のほうを向いて守るキャッチャーには、「リード」以外の面でも、他のポジションの選手が経験し得ない特有の「苦労」があったりする。
その最たるものが、球場によって大きさの違うバックスクリーンの存在だ。
「えっ!? あれって、本来はボールを見やすくするためのものでしょ?」
と、思う方もいるかもしれないが、厄介なのは、スコアボードの周辺に設置されている巨大な広告ボードにボールが被ったとき。
特にデーゲームの神宮球場や横浜スタジアムで、右ピッチャーにカーブを多投されたときなどは、もはやファンにはおなじみの「コカ・コーラ」や「キリン」といった企業ロゴの白抜き文字にちょうどボールが重なって、本当に見えなくなってしまうのだ。
もちろん、すべてのチーム・選手が同条件でプレーしている以上、個々の選手にはそれらのハンディキャップにもアジャストしていく義務は当然ある。
たとえ、かつての広島市民球場のバックスクリーンが小さすぎて、スリークオーター、サイドスローの左ピッチャーのボールが、観客席から突然出てくるように見えてしまうような状態だったとしても、僕らはそれに合わせて「どうにかして捕る」以外にないわけだ。
つい先日には、くだんの横浜スタジアムのナイター照明がすべてLEDに変わったことで、外野手のエラーが多発しているといった報道もあったが、僕からすれば、それにアジャストするのも、プロでやっていくための重要な能力のひとつだ。
パスボールをしたキャッチャーが、「看板の文字に被って見えなかったんですよ」なんて言い訳をしても、誰も納得してくれないのと同様、いくら見えづらいからと言っても、「それは、仕方ないよね。次、がんばろ」と言ってもらえるほど、甘くはないのがプロの世界なのである。
これもまた、日頃、あまり注目されないところで“ボールの見えづらさ問題”に直面している、キャッチャーならではの「視点」と言えるだろう。
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里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ。徳島県鳴門市。鳴門工(現・鳴門渦潮高)、帝京大学を経て、98年のドラフト会議で、千葉ロッテマリーンズを逆指名(2位)して、入団。03年に78試合ながら打率3割をマークし、レギュラー定着の足がかりをつくる。05年は橋本将との併用ながらも、日本一に貢献。06年にはWBC日本代表として世界一にも輝いた。また、大舞台にもめっぽう強く、05年プレーオフのソフトバンク戦で馬原孝浩(現・オリックス)から打った、日本シリーズ進出を決める値千金の決勝タイムリーや、故障明けのぶっつけ本番で臨んだ10年のCSファーストステージ・西武戦での、初戦9回同点タイムリー、長田秀一郎(現・DeNA)から放った2戦目9回同点弾をはじめ、持ち前の勝負強さで数々の名シーンを演出。00年代の千葉ロッテを牽引した〝歌って、踊って、打ちまくる〟エンターテイナーとして、ファンからも熱烈に支持された。