オンオフ問わず外国人選手をサポート。DeNAベイスターズの通訳が一番緊張する場面は?
外国人選手の活躍いかんで、チームの成績は大きく影響する。そんな外国人選手が気持ちよくプレーするために、またチームメイトや監督・コーチ陣、さらにはファンとの円滑なコミュニケーションを行う上で、通訳の存在は非常に重要となる。
2019/02/20
偏った意見や自分の主観を入れない
では、重要な点であるコーチら首脳陣との会話で通訳として気をつけている点は何か?
「大事なのはどちらかに偏った意見や自分の主観を入れないことですね。基本的に言葉そのままを訳すことが仕事ではありますが、その際に選手の側に立ちすぎたり、指導者の意見ばかりを押し付けたりしない。選手の意見が強くなってしまえば文句を言っているだけになってしまうし、指導者の意見を強くすれば選手は不信感を持ってしまう可能性もあります。しっかりと互いがたどり着きたい場所を察して、会話を進め訳すようにしています」(飯澤氏)
「そこで大事になってくるのが、その後のフォローになります。その場だけの通訳だと本人も言いたいことを伝えきれないことが多い。日本人同士であっても自分の本意が伝わらないことがあるじゃないですか。そこをしっかりと把握し、本人がいないところでコーチやトレーナーと話し合って理解を深めるようにしています。そういったカバーをする作業というのはチーム内の意思疎通においてすごく重要になります」(天野氏)
文化も環境も異なる日本という国で野球をプレーするにあたり、通訳があらゆる意味で媒介役となり、外国人選手たちは環境にアジャストしていく。
そんな通訳の仕事で一番緊張する場面は何かと尋ねると、両者ともヒーローインタビューだという。多くのファンの前で選手と一緒に上がるお立ち台。もちろん主役ではないが、通訳にとっても晴れ舞台でもある。
「正直な話、何度やっても慣れませんね。今はそんなことはないですが、この仕事を始めたころヒーローインタビューで頭が真っ白になってしまって沈黙してしまったことがあります。スタジアムをざわつかせてしまってファンの方々や選手には悪いことをしてしまったなと」(飯澤氏)
「お立ち台は外国人選手も結構緊張するみたいで、毎回同じようなことを言う選手もいますね。ただ数をこなしていくと慣れていくようです。あと僕は動画に残っていればチェックします。いつもこう言えば良かった、もっと適切な言い方があったんじゃないかと反省会をしていますよ」(天野氏)
さて今シーズン、DeNAベイスターズはBクラスからの巻き返しとなるが、頂点を目指すためには外国人選手の活躍は必要不可欠だ。通訳の両者は、シーズンを通してベンチに身を置き、スタジアムを移動し、選手たちとともにファミリーの一員として戦っている。
「この仕事に就いてからというもの、プロ野球の世界は改めて夢を与える場所なんだと実感しています。その一員になれていること、また外国人選手の言葉を皆さんに伝え盛り上がってもらえることに、やりがいを感じるし、誇りに思います」(天野氏)
「天野さんがおっしゃるように、夢や感動を与える瞬間を間近で見られ、自分はすごい場所に立ち会っているんだと日々感じています。ファンの方々が喜んでいる姿を見て、直接的ではありませんが、自分の存在がなにかしらの形で貢献できていることを思うと嬉しいです」(飯澤氏)
そろそろオープン戦もスタートし、シーズン開幕への機運が高まる今日この頃。スタジアムに足を運んだ際には、彼らがどのようにして外国人選手に寄りそっているのか、ぜひ注目してもらいたい。