「パワーピッチャー」の守護神・松井裕樹は今、進化の真っ最中【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、楽天の新守護神としてここまで13試合無失点の好投を続けている松井裕樹についてだ。
2015/05/15
要所を締めるピッチングで無失点を継続
チームは低迷しているが、楽天は大久保新監督になってから、いろいろと変化を見せつつある。特に松井裕樹のクローザーへのコンバートは明るい話題だ。
クローザーを予定していたミコライオの故障による抜擢も、今のところ大成功だ。
キャリアSTATSを見てみよう。昨年の二軍成績も加えた(今季は二軍登板なし)。
昨年、星野仙一前監督は新人の松井を4月からローテーションの一角として起用した。二軍のずば抜けた成績を見れば、力は一軍クラスであることはわかる。
しかし一軍では当初、制球難に苦しみ、なかなか結果を残せない状況が続いた。5月から中継ぎに転向。7月23日からは再び先発で起用しシーズンを終えている。
防御率3.80、WHIP(1回当りの走者=安打、四死球の数)が1.43と合格ラインの1.20よりも大幅に下回っていた。力に任せて投げていたという印象だ。
それが今季の松井は、オープン戦から5試合無失点と絶好調。開幕してからもまだ無失点。投球内容も見違えるほど良くなっている。
松井は150km/h前後の勢いのある速球と、キレ味抜群のスライダー、さらにはチェンジアップが持ち味だ。特に左投手でこれだけ鋭く変化するスライダーの持ち主は他にいないだろう。短いイニング限定にしたことでその持ち味が存分に発揮されている。
今季の戦績を見てみよう。
3月28日の開幕第2戦でクローザーとしてデビューした松井は、その後も順調にセーブ数を重ねている。3月31日の西武戦で2安打されたが、その後は9試合連続で安打を許さなかった。もちろん被本塁打もゼロだ。
子細に見ると、四球は結構出している。お世辞にも制球が良いとは言えない。しかし走者を許しても肝心のところでは安打されない。要所を締めることができているのだ。
4月19日から5月1日まで登板がなかったのは、チームが不振でクローザーが登板する状況が作れなかったからだ。
連投は1度だけ。ただイニングまたぎは5回と結構多い。以前に森繁和さんから「投手はベンチに座った数だけ疲労する」と伺ったことがある。いずれにせよ、分業制が確立されている今、イニングまたぎというのは、9回1イニング限定で投げる以上に精神的・肉体的に負担がかかっているはずだ。