加藤貴之よ、最高の0勝投手になれ! 日本野球「オープナー」の先駆けとして新しい価値を【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#99】
2019年シーズン序盤、日本ハムは「オープナー」&「イニングイーター」で試合をつくるメジャー流の投手起用を行っている。その重要な役割を担うのが加藤貴之だ。
2019/04/14
メジャー流の投手分業制に挑む
2019年シーズン序盤のファイターズを語る上で加藤貴之の名前は外せないことになった。開幕4戦目の楽天戦初戦から、実に3カード連続で予告先発に立っている。10日間で3度の先発だ。雪の楽天生命パークに始まって、東京ドーム、ヤフオクドームと列島縦断ツアーみたいだ。僕は5日の東京ドーム(西武戦、上沢直之の力投で勝った)の試合途中、「明日の予告先発」が加藤と発表になり、スタンドがどよめいたのが忘れられない。開幕シリーズのオリックス3連戦が上沢、金子弌大、有原航平だったから当然、表ローテで金子の先発を皆、予想していた。
「え、また加藤?」
「金子弌大じゃないんだ!」
「すげぇ、ショートスターターだ!」
「オープナーだ!」
「加藤、中3日で行けるんだ」
「リリーフなら中3日アリだろ?」
そういう感じのことを皆、口々に言っていた。そりゃ球場全体がざわざわするわけだ。今季、ファイターズが採用したメジャー流の投手起用である。まだ用語が「ショートスターター」「オープナー」、どちらで統一するのか定まっていない。先日、北海道新聞のコラムで「ショートスターター」と書いたら、「メジャーではこっちのほうが一般的なのかもしれませんが、栗山監督は『オープナー』を使っています。これに統一させてください。新聞的には短い言葉が求められるんです」と直されてきた。それは納得したのだ。「パシフィックリーグ」を「パ」、「ドジャース」を「ド軍」、「ファイターズの2軍」を「ハム弟」と文字数を節約し表現してきた新聞の歴史がある。
ただ他紙では「ショートスターター」を用いるケースもあり、用語としては混在している。僕はこのリアル、このナマモノ感をコラムにしたいのだ。用語の定まらないなか、加藤は10日間で3度先発している。今、僕らの目の前で起きているいちばんホットな事象なのだ。
※本稿では以下、「オープナー」とします。スッキリしているし、どことなく「大船」っぽい語感も好ましい。松竹オープナー撮影所(?)。
「オープナー」の定義だが、これは従来の先発(スターター)と違い、勝利の権利を得る5イニングを前提としない先発投手、でどうだろうか。主としてリリーフ投手が短いイニングを任され、失点率の高い上位打線を抑える。加藤は先発、リリーフどちらの経験も持っており、「1巡目は抑えるが、2巡目につかまる」というデータ傾向から白羽の矢が立ったようだ。
(本稿執筆の4月12日時点で)ファイターズは「オープナー」を用いた試合で4戦4敗している。リリーフの負担も増していて、何かと批判にさらされているところだ。消極的に「マルティネスの故障もあって、先発が薄いから仕方ないだろう」と認める声もある。が、若い層ならともかく僕の年代のファンには大変評判が悪い。面白野球やってる場合か、というわけだ。僕のように「加藤~、次の3連戦もどっかで投げてほしい~」「うわ~、サードが変なとこ守るシフトだ~」とハヒハヒしてるおっさんは珍しいらしい。
4月2日楽天戦、加藤3回無失点、バーベイト3回1失点
4日楽天戦、斎藤佑樹1回2/3、3失点、上原健太3回2/3、3失点
6日西武戦、加藤2回無失点、金子弌大2回5失点
11日ソフトバンク戦、加藤3回2/3、5失点、西村1回1/3無失点
これが4戦4敗の内訳だ。そんなに失敗してるかなぁと思うのだ。試合の勝ち負けは打線も含めたチーム全体の問題だ。少なくとも4月2日は加藤とバーベイトで試合をつくっている。4日の斎藤は即2軍行きになって印象が悪いが、上原と2人で試合をつくりかけた(大敗した試合だが、途中2対3まで行っている)と考えることもできる。6日は「オープナー」の加藤よりも2番手、金子の問題だった。11日は加藤が不運もあって2巡目でつかまった(1巡目はほぼ完璧に抑えきった)。
結果が伴わず、逆風にさらされてもファイターズがこの新しい投手分業制を引っ込めるつもりがないのは、11日、西村の後、負け試合(正確には「配色濃厚のなか」)で金子弌大を2イニング投げさせたことで明らかだ。金子に慣れてもらいたいのだ。登板のリズムを変えたくない。金子は6日の試合後、「気持ちも体もコントロールしていかないと、やっぱり投げるコントロールも悪くなってしまう」「(先発の感覚で)長いイニング投げるつもりでいくんですけど、試合の途中でいくのは事実。もっと自分のなかで割り切っていかないといけない」とリリーフ登板の難しさを語っている。