加藤貴之よ、最高の0勝投手になれ! 日本野球「オープナー」の先駆けとして新しい価値を【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#99】
2019年シーズン序盤、日本ハムは「オープナー」&「イニングイーター」で試合をつくるメジャー流の投手起用を行っている。その重要な役割を担うのが加藤貴之だ。
2019/04/14
大谷のような新しい価値を
そうなのだ、本邦初「オープナー」の問題は、とりも直さず2番手、「イニングイーター」の問題でもあるのだ。「イニングイーター」は従来ならロングリリーフ(先発が早い回でつぶれたとき、第2先発のつもりで試合をつくり直し、味方の援護を待つ)と呼ばれた役割だ。但し、今度の場合はあらかじめ制度設計されたロングリリーフ、文字通り「イニングを食う」(沢山イニングを稼ぐ)ことを期待されている。「オープナー」が成功するためには「イニングイーター」も成功して、2人で例えばクオリティスタート(6回を3自責点以内)を成し遂げねばならない。
僕は「オープナー」&「イニングイーター」をコンビものという風に発想している。2人一組。プロ野球の「スタスキー&ハッチ」「トミー&マツ」(←たとえが古い!)でどうだろう。金田正一、稲尾和久の昔なら投手は先発完投が常識だったけれど、今は分業制が確立している。クローザー、セットアッパーを整備しない球団は存在しない。では、後ろを分業化して、なぜ前は分業化しちゃいけないのか。
4戦4敗。が、これは試行錯誤の時期だ。僕はかつてファイターズに江夏豊がやって来たときのことを覚えている。広島で「江夏の21球」と語り草になる超絶リリーフを演じた「優勝請負人」は、しかし、ファイターズで何度かリリーフに失敗した。
かつての阪神の剛速球左腕は、血行障害のため30球ほどで握力が小学生並みに落ちてしまうハンデを抱えていた(それを逆手に取って、少ない球数で仕事をする「ストッパー」に活路を見出した)。当時、ファイターズの監督を務めていた大沢親分は7回から江夏に行かせたのだ。今の基準なら7、8、9回で二度のイニングまたぎである。球数も30を超えてしまった。江夏は「行けと言われれば行くのが男」というタイプであり、大沢親分は「こうなったら江夏と心中だぜ」というタイプだった。そりゃ9回、相手打線につかまってしまう。
試行錯誤の時期というのはそういうものだ。何度かやってるうちにちょうどいいやり方がわかってくる。僕は「二刀流」で大谷翔平が新しい価値をつくり上げたように、加藤貴之には「オープナー」で輝きを放ってほしい。金子弌大には「イニングイーター」で新境地をひらいてほしい。
来季、2人とも先発ローテの柱になって、ばんばん完投してもらったとしても構わないのだ。今、日本野球の「オープナー」「イニングイーター」の先駆けを務めることの栄誉を思う。特に加藤だなぁ。金子は先発投手最高の勲章、沢村賞を獲得した大投手だ。加藤は成功すれば球史に名前が残るだろう。今オフ、0勝で年俸ジャンプアップしたら痛快じゃないか。プロ野球史上、最高の0勝投手を目指してほしいのだ。
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