「ピタゴラス勝率」から何が見える? 接戦に強いチームがペナントを制すの意味【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、「ピタゴラス勝率」と実際の勝率を算出して、各チームの勝負強さを測った。
2015/05/22
内弁慶なカープ
次にセリーグだ。
DeNAは1点差勝負で12勝7敗と勝ち越し。新人の山崎など救援陣の活躍が大きい。反対に広島は8勝17敗と大きく負け越している。特にロードでの1点差勝負は1勝11敗で、マツダスタジアムでは7勝6敗からしても、極端な内弁慶になっていることがわかる。カープの場合、中継ぎ陣が安定感に欠いていて、それが接戦での成績につながっているのだろう。阪神は2点差での勝負が8勝1敗で、やはり呉昇桓の存在が大きい。
両リーグの1点差試合数はパが31試合、セが60試合。セリーグのほうが接戦が多いことがわかる。
数字からわかる、接戦を制する重要性
戦力的に劣っていても、接戦をものにすれば上位に行くことができる。反対に圧倒的な戦力でも、接戦に勝てなければ優勝は難しい。
接戦をものにするかどうかは、選手自身の好不調など「運」の作用もあるが、選手の故障や不調など予期せぬ事態でどう選手をやりくりできるか、また状態のいい選手をタイミングよく起用して勝利に導けるかなど指揮官の戦術、用兵の要素も関わってくる。
近年だと、2013年の例を見ると面白い。
パリーグの最終順位表にピタゴラス勝率をつけた。
田中将大が24勝0敗と空前の活躍をし、楽天を日本一に導いた年として記憶に新しい。しかしピタゴラス勝率だけで見れば、この年の優勝はソフトバンク、楽天は僅差で2位という順位になる。
実際のソフトバンクはクライマックスシリーズに進めなかった。この年は投打のバランスが悪く、大勝する試合がある一方で、接戦を落とす試合が多かった。そのため実際の勝率とピタゴラス勝率に違いが表れた。
ペナントレースを制するのは「接戦を制するチーム」ということがわかってくる。
1点を取る野球、接戦をものにする野球の重要さも見えてくる。こういう視点でプロ野球を見ると、より趣が深くなるのではないか。
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