手薄な竜先発陣の中でフル回転 助っ人バルデス、驚異のタフネスさ
中日ドラゴンズのラウル・バルデスが、5月19日の広島戦で待望の来日初勝利。19日時点では、投球回数はリーグトップ。しかも10試合中9試合でQSを達成している。
2015/05/23
勝てなくても、黙々と投げ続ける
バルデスが勝った。やっと勝った。
中日ドラゴンズのラウル・バルデスが、5月19日の広島戦で待望の来日初勝利を挙げた。ドラゴンズにとっても大きな1勝である。
バルデスの先発はこの日で10試合目、防御率は2.65のセリーグ9位であり、QS(6回以上、自責点3以下)は10試合中9試合で達成している。
上々の成績といっていいが、さらに特筆すべきは投球回数だ。
19日の時点で、両リーグトップの68回。そのうち、中4日が4回、中5日が4回。130球以上投げた後、中4日で先発したこともあった。4月終了時に7度の先発をこなしたのは1964年以来、51年ぶりの記録となる。
友利投手コーチによると、「ドミニカでは130球完投のあと中1日で先発して100球以上投げた」こともあるのだという。登板の翌日には「次はいつ投げるんだ?」と聞いてくるミスター投げたがり。
もはや日本球界ではポストシーズンの短期決戦以外、絶滅しかかっていた中4日登板という概念を復活させた男、バルデス。
入団当初、「中4日でもイケる」という本人の言葉を聞いたときは、ドラゴンズファンの中には「今年38歳になるオッサンが何言ってるんだ」と思った人もいるだろう。
そんなバルデスはもはや、ドラゴンズの手薄な先発陣の中で、なくてはならない存在である。
しかし、どうしても勝ち星に恵まれなかった。
投げても、投げても、勝てない。
抑えても、抑えても、援護がない。
それでも腐ることなく、バルデスは表情を変えずに投げ続けた。
「こういう投球を続けていれば、勝ちはついてくる」
こんな殊勝なことを言って、さらに投げ続けた。
バルデスが登板する日になると、ドラゴンズファンは祈るような気持ちになっていった。
頑張っても報われないバルデスの姿に、自分自身の姿を重ねて励まされるファンも増えていった。
5月8日の阪神戦では8回を1失点で抑え、勝利目前にまで迫ったが、又吉克樹と福谷浩司のリリーフ陣が崩壊してまさかの逆転負けした時も、バルデスは試合後、こんなコメントを残している。
「キューバでもドミニカでも、こういう経験はある。人生は、自分がコントロールできることしか、できない。ボクにできることは、ストライクを先行させること」