手薄な竜先発陣の中でフル回転 助っ人バルデス、驚異のタフネスさ
中日ドラゴンズのラウル・バルデスが、5月19日の広島戦で待望の来日初勝利。19日時点では、投球回数はリーグトップ。しかも10試合中9試合でQSを達成している。
2015/05/23
“準備”を大切に
バルデスは苦労人だ。
キューバ出身、野球での一攫千金をめざしてドミニカに亡命を計画するが、5度も失敗を重ねた。数週間の刑務所生活を経験したこともある。
6度目にようやく成功し、小さなボートでドミニカにたどり着くが、亡命を手伝った実兄のホルヘさんは刑務所に10年間も入れられた。
04年にシカゴ・カブスと契約したバルデスだが、マイナー暮らし。06年に契約解除された後は独立リーグとマイナーを渡り歩き、2010年にニューヨーク・メッツでメジャーデビューしたときは32歳になっていた。想像を絶する野球人生である。
そんなバルデスが大切にしていること、それが“準備”だ。
「キャンプではしっかりと準備し、シーズンに入ったらチームの勝利に貢献できるよう頑張ります」
「負けたら次の試合に向けた準備とか、前向きにいきました」
上が入団会見でのコメント、下が初勝利後のコメントである。
誰よりも準備を大切にする谷繁元信監督兼選手も、バルデスについて
「毎回しっかりと準備をして、自分の投球をする。それを繰り返しできることが彼の素晴らしいところです」と賞賛の言葉を送っている。
これまで過酷なコンディションで野球を続けてきたバルデスが、ベストなピッチングをするためには、常に試合に対するこの準備が欠かせなかったのだろう。
力感の伝わらない、手投げのようなフォームでポンポンとストライクを投げ込むバルデス。
4月初旬の気温3度の日でも、半袖シャツ一丁でマウンドに上がるバルデス。
どんなに勝てなくても、準備を怠らず、自分のベストを尽くすバルデス。
バルデスの野球に対する真摯な姿勢が、チームを一丸にした。
「みんながバルデスに勝たせてあげようと、口には出さないけど心の中で思っていた」
19日の広島戦で前田健太から逆転の2点タイムリーを放った亀澤恭平のコメントだ。
19日の試合後、ドラゴンズファンは初めてバルデスのはじける笑顔を見ることができた。
これまで勝てなかったバルデスが勝利を積み重ねていけば、おのずとドラゴンズの順位も上がっていく。われわれはもっともっとバルデスの笑顔が見たい。
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