【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】MVPは菅野が最有力? 際立つ四球数の少なさ。ジャイアンツ、優勝の功労者は先発投手陣
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。第4回目は、巨人の優勝の要因を数字から考えてみた。
2014/09/29
ピタゴラス勝率では広島が上
9月26日、巨人がセリーグ優勝を果たし、2012年以来3連覇を達成した。
私はこの試合を現地で見た。
優勝決定の瞬間には、ナインがグランドに飛び出し、スタンドからはオレンジのテープが投げ入れられた。
横浜スタジアムの定員は3万人余だが、この日の入場者数は28566人。大入り満員ではなかったのだ。実際に私のシートの隣はあいたままだった。かつて巨人戦は満員が当たり前だったころから考えると、今昔の思いがある。
今年の巨人は6月以降、首位を明け渡さなかったものの、これまでに比べると、優勝までの道のりは決して平坦ではなかったと言える。
それは数字でもはっきり表れている。セリーグの勝敗表と攻守のデータを見てみよう。 数字は9/27現在のもの。
巨人は広島に7ゲーム差を付けてはいるが、得失点差では広島よりも少ない。
したがって得失点に基づいた勝率のシミュレーションであるピタゴラス勝率では、広島に負けている。
つまり、この数字通りなら広島が優勝していてもおかしくないのだ。
巨人の苦戦の原因は「投打のバランスの悪さ」
その原因は、ひとことで言えば「投打のバランスの悪さ」にある。
巨人は防御率はリーグ1位だが、打率はリーグ最下位だ。
阿部慎之助(19本塁打57打点.246)、村田修一(20本塁打65打点.251)の主軸二人が不調に苦しみ、長野久義(13本塁打62打点.297)、坂本勇人(15本塁打57打点)も年間通じて安定した成績とは言い難い。
新戦力の片岡治大(6本塁打32打点.247)や、鳴り物入りで入団したキューバの至宝セぺダ(6本塁打18打点.194)も同様だ。
かろうじてアンダーソン(13本塁打45打点.324)や、後半から上がってきた亀井善行(8本塁打26打点.303)らの活躍、さらには少ないチャンスを確実に得点につなげる鈴木尚広の足、井端弘和や高橋由伸らベテランがチームを支えた。
今年の巨人は「得点力の低い打線」を投手陣がカバーしたともいえる。
では、今年の巨人投手陣は何が良かったのか。
実のところ、救援陣は昨年よりはるかに見劣りがした。
絶対的な「抑えの方程式」だった「スコット鉄太朗」は、今年あっけなく崩壊した。
3人の自責点の合計は25から60に防御率は1.13から3.18に。今年はこの3人が揃って投げれば1点は奪われることを覚悟しなければならなかった。
そんな中、先発投手陣がしっかりと役割を果たした。
6球団の先発投手陣のデータを出すとはっきりとそれがわかる。