大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



上沢直之を襲った一球――『不動のエース』への物語は来季へ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#104】

先日、DeNAソトの痛烈な打球を受け、そのまま退場となった上沢直之。診断結果は左膝蓋骨骨折――チームにとって、あまりにも痛すぎる戦線離脱となった。

2019/06/23

text By



ソトへの気遣い

 2019年開幕投手、上沢直之はタンカで運び出された。そのまま救急車で病院へ直行だった。長期離脱の可能性があった。何ということだろう。ヒジ手術で2016年日本一の輪に加われなかった男が、ついに野球の花道に出てきたのに。ホンモノのエースに成長する過程だった。この世には神も仏もないものか。
 
 その試合は0対3で敗れるのだが、正直、試合どころじゃなくなってしまった。勝敗どうでもいい。下手したら上沢の選手生命に関わる事態じゃないか。
 
 翌朝、(バカだと思われるだろうが)観音様に願掛けに行ったのだ。まぁ、東京下町の暮らしだから浅草寺が身近だ。今、思うと不思議だが「上沢の無事」でなく「復帰」を祈っていた。まだ球団から診断結果も発表されてなかったのに。
 
 球団発表は「左膝蓋骨骨折」であった。俗にいうヒザのお皿が割れた状態だ。ハマスタのマウンドで激痛に身をよじっていた姿が思い出される。投手は過酷な職業だ。何の防具もつけず、マウンドに立たねばならない。そして、左膝蓋骨は心配だと思った。左は上沢の踏み込む足で、ヒザは下半身の粘りを支える。
 
 つまり、こういうことになる。上沢直之が「押しも押されもしないエースにのし上がる物語」は、ここでふっと途切れてしまった。僕らはただ沈黙するしかない。いちばんつらいのは僕らでなく、上沢本人だから。
 
追記 左膝蓋骨の整復手術を終えた翌日、上沢直之は自身のツイッターで「今回のことはプレー中に起きたことですし、ピッチャーをやってる以上仕方ないことだと思います。ソト選手の打球は速すぎて見えませんでした笑」「それはソト選手が素晴らしい打者であると同時にそのような打者と対戦できることはピッチャーとして幸せです!」と、むしろソトを気遣っていた。感動した。これがエースの振舞いでなくて何だろう。
 
石川直也「リリーフエース」としての課題。宮西の投球から大局観を学べ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#105】
 

1 2


error: Content is protected !!