交流戦の原点を忘れずに 大谷翔平の1試合での二刀流を期待【小宮山悟の眼】
11年目を迎えた交流戦が始まった。今季はルール・システムに大きな変更が施された。しかし、どんなルールであれ、交流戦導入時の原点を忘れてはならないだろう。
2015/06/01
ファンが楽しめる試合を
さて、実際の試合における興味のほうへ話を移そう。注目の対戦はいくつもあるが、やはりセリーグのファンにとっては、本拠地で日本ハム・大谷翔平がプレーすることを楽しみにしているのではないか。
セ本拠のゲームでは、DHがないため「打って」「投げて」という二刀流を、1試合の中で楽しめるのだ。個人的には、先発したマウンドを降りた後、ライトのポジションに就いてくれないかと期待している。7回までマウンドに立ち、投球数が100球前後に達したら、それ以降は野手としてプレー。8、9回に打順が回れば、ファンの方も喜ぶだろう。
実は、大谷が二刀流に挑戦するという話を聞いたとき、私は、通常時は3番ライトでプレーするスタイルと期待していた。ピンチの場面になったらライトからマウンドに上り、ピシッと抑える。そんな究極のセットアッパーになってくれたら、毎日、彼のプレーを楽しめる。そういう風に考えていた。
そのスタイルとは少し違うが、降板後に外野へ回ってくれれば、「打つ」「投げる」の他に「守る」大谷も見ることができる。欲張りな意見かもしれないが、栗山監督にはぜひ、起用法の選択肢の一つとして考えていただきたい。
1カードが2連戦から3連戦になったこと、同カードでホーム&ビジターを行わないことで、もしかしたらチームによって多少の有利不利が出てくるかもしれない。スケジュールに余裕があり、ローテーションの谷間のない2連戦のほうが得意だったチームが、3連戦になって伸び悩む場合もあるだろう。今シーズン、苦手チームとの敵地での戦いを避けられたことで、その3戦の結果が、シーズントータルの結果に微妙に影響を及ぼすこともあるだろう。ただ、そういうシステム変更がもたらす悲喜こもごもは、ある程度時間が経ってから検証すればいいことだ。そうやって、いろんなデータを探していくことも、野球の終わってみてからのひとつの楽しみ方だと思う。
それに、そもそもシーズンスケジュールや交流戦のシステムに完成形などない。実際にやってみて、少しずつ良い方向へ変えていけばいいのだ。レギュラーシーズンの試合数は、このままでいいのか。もっと増やすべきだという考えもあるし、逆に減らしたほうがいいという意見もあるだろう。また、ポストシーズンの試合数についても同じことが言える。これから毎オフ、侍JAPANの試合が組み込まれることになるため、スケジューリングはますますタイトになっていくだろう。そういうことがトータルとして話し合われなければならない。
大切なのは、「ファンが喜ぶ形は何か」と常に意識すること。交流戦が導入された経緯をもう一度思い返してほしい。2004年、球団削減問題がこじれ、選手会のストライキにまで発展。その反省を踏まえ、「ファンに喜んでもらおう」というプロ野球の原点に返った考え方から誕生したイベントのひとつが、交流戦だったではないか。
ファンが楽しめる試合を。今年の交流戦でも、そんな試合が1試合でも多く誕生することを望む。
―――――――――――――――――――――――
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。