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FA移籍1年目の評価が今後の立場を決める 岐路に立つ、ヤクルト成瀬善久【小宮山悟の眼】

今回は、今季から新天地でプレーしている移籍選手にフューチャーしたい。個人的に最も気になる存在は、千葉ロッテ時代の後輩で、今季からヤクルトの一員となった成瀬善久だ。

2015/06/03

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今の状況を受け入れ、必死な姿を

 私も移籍1年目に苦労した経験がある。
 1999年オフ、ロッテから横浜へ移籍した。迎えた2000年のキャンプに、相当のプレッシャーを感じながら臨んだことを憶えている。

「ここで思うような結果を残せなかったら終わり」
 それくらいの覚悟があった。

 ロッテで「ダメだ」という扱いを受けた選手を、当時の横浜の大堀球団社長が「小宮山は良い」と気に入ってくれ、さらに権藤監督が「クビになるような選手じゃない。しっかりしたボールを投げられる投手で、戦力だと思っている」と公言してくれた。余計に「頑張らなければいけない」の思いは強くなった。

 現在の成瀬が、そういう崖っぷち感を持っているかどうか心配になる。

 大切なのは、現在、自分が置かれた状況を受け入れること。絶対に自ら「こんなはずじゃなかった」と自棄になってはいけない。そして、「壁をぶち破れなければ終わりだ」という覚悟をもって、もがき苦しむ。さらに、そういう必死な姿を練習の段階からみんなの前で見せなければいけない。その姿を見た球団フロントが「あいつも苦労しているな。頑張っているんだ」と感じてくれたら、まだ救いはあるだろう。

 試合のパフォーマンスでチーム内の地位を確立することが、プロ野球選手の本質であることは百も承知している。

 しかし、それができないのだから、せめて気持ちの面だけでも認めてもらう努力は必要だろう。成瀬の性格からいって、やる気を全面に出すのは苦手かもしれないが、そんなことを言っていられる状況ではないのだ。

 良くも悪くも、日本の球団には、義理や人情も絡んだファミリー体質が残っている。そこで、家族の一員となるのか、それとも助っ人の立場でプレーするのか。これから先、思うような成績を残せなかった時、家族の立場だったら「もう少し様子を見てみよう」と思ってもらえるだろうし、助っ人の立場だったら、すぐに「代わりを探さなければ」と判断されるだろう。

 どちらの道に進むのか。成瀬は今、その岐路に立っている。

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小宮山悟(こみやま・さとる)

1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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