苦しい状況こそ「飛び出せ、新時代」。石井一成らの若手台頭で首位追撃態勢なるか【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#106】
オールスター明け、ファイターズは良いスタートを切った。主力選手が相次いで戦線離脱をしているが、若手の勢いを大切にしながらも、中堅選手に復調のきっかけを与える栗山采配が光る。
2019/07/21
好スタートを切ったが戦力的には苦しい
オールスター明け、後半戦スタートのソフトバンク戦、ファイターズは何と敵地でスイープを達成、ゲーム差を4まで縮めることとなった。本稿執筆現在(7月20日午前)はその後、ファイターズがロッテに勝ち、ソフトバンクが楽天に負けた(美馬のパーフェクトならず!)ため、3差まで急接近している。当コラムとしてはこれを取り上げないわけにいかない。
もちろん色んな書き方が可能だ。ホークス側から見ればケガ人が続出し、その上、いちばん当たっているグラシアルが(ハム3連戦の後)ナショナルチーム招集のため一時帰国してしまう「緊急事態」だ。点が取れなくて四苦八苦している。メンバーさえ揃えば12球団最強の打線(ライバルチームファンの僕が言うのだから間違いない!)が組めるというのに、本格的な夏を前に急ブレーキがかかってしまった。
一方、ファイターズは後半戦口開けの3連戦に照準をしぼっていた。ゲーム差が7もあった。普通に考えれば「独走」だ。野球界ではオールスター明け以降を「後半戦」と呼ぶが、実際にはもう半分はない。最初に縮めておかないと追いつくのは難しい。リリーフ陣がリフレッシュした「オールスター明け」はチャンスだった。
といってファイターズも苦しいのだ。あんまり言わないようにしたいが上沢直之がシーズンアウトしてしまった。ハンコックが戻ってきたが、首を長くして待っているマルティネスはもうちょっとかかる。「照準をしぼった」3連戦も堀瑞輝のオープナー起用(事実上の「ブルペンデー」?)で始めざるを得ない。
打線は大田泰示が戦列復帰したけど、王柏融が離脱中。また清宮幸太郎はやっぱり故障明けの急仕上げがたたって絶不調である。「5番・渡邉諒、6番・石井一成」というびっくりオーダーを組むに至った。しみじみ噛みしめたい。こんな日が来るってキャンプの頃、思ってましたか?「5番・渡邉諒、6番・石井一成」。まさにファイターズの今季のキャッチフレーズ「飛び出せ、新時代」だ。
本稿はその「5番・渡邉諒、6番・石井一成」にスポットを当てつつ、内野手の起用について考えたい。いや、あんまり考えないかもしれないが、せめて思いを巡らしたい。先ほども言ったことだが、タイムマシンで春季キャンプの時期に戻って「今年はね、5番・渡邉諒、6番・石井一成を組むよ」と言っても間違いなく一笑に付されたと思うのだ。それはなぜか。いちばんシンプルな答えは「そんなに打てるわけないから」だろう。なべりょはパンチ力はあるが、今季クリンアップの一角を務めるとは誰も思わなかった。石井一成(以下、ピンちゃん)に至っては皆、打てないと確信していた。
もっと言えばなべりょもピンちゃんもレギュラー確実とは言い難かった。なべりょは栗山監督が積極的に使い続けてるが、結果が出なければ外される可能性があった。ピンは守備固め要員としては貴重だったが、レギュラー獲りには中島卓也を抜く必要がある。まずスタメンに名を連ねなければ「5番・渡邉諒、6番・石井一成」もへったくれもないじゃないか。ハードルはとても高かったのだ。
なべりょの成長に関しては今季、当コラムで取り上げている。サマになってきた。さすがにまだ5番は「家賃が高い」けれど、チャンスを与えられて張り切っている。がんばって5番打者の「家賃」を払い続けてほしい。いつか「あれ、払えてるじゃん」ってことになるのが理想だ。下位打線の「意外性の男」に戻る必要ないだろう。がんばれがんばれ。払えるところまで払え。