実の狙いはインコース。大いなる誤解が選手・落合博満を大記録へ導いた【横尾弘一「取材ノートから紐解く野球のミカタ」】
日本代表、社会人野球を中心に取材を続けている野球ジャーナリストの横尾弘一氏。現在、中日ドラゴンズの監督、GMを務めた落合博満氏の著書『采配』などにも携わった。この連載では、横尾氏のこれまでの取材を基に、野球の見方について掘り下げていく。第1回目は、落合博満GMが現役時代のエピソードから。経験に基づきながらも、経験則を鵜呑みにしない思考を持つ重要性。それが新しい野球の采配や見方につながるのではないだろうか。(2014年9月30日配信分。再掲載)
2014/09/30
情報に頼りすぎると、落とし穴にはまる
そうなると、落合と対戦する球団は「やはり落合はアウトコースをさばくのがうまい。インコースも使って勝負しなければ」と分析し、そのデータを渡された投手はインコースを攻める。落合はまさに、そのボールを待っていたのである。
「その大いなる誤解が続いたからこそ、私は20年もユニフォームを着ることができたんだよ」
どんな仕事でも、ひと筋に培った経験や知識は大きな財産だ。
ところが、それに頼りすぎると見えなくなってしまうものもあり、大きな落とし穴にはまるのだと落合は説く。
「このケースならばこう攻めるべきだ。こういう打撃フォームはこうやって直すべき。野球界にも、セオリーとか正攻法と呼ばれるものがあるけれど、本当にそれでいいのか。失敗した例はないのか。そうやってフラットに考えることこそ、勝つ確率、打てる確率を高めていくんじゃないのかな」
経験に基づきながらも、経験則を鵜呑みにしない思考。
野球の見方ではそれが大切なことを、落合の現役時代は示している。
シーズン終盤に状態が上がったチームは有利――落合博満GMが振り返る日本シリーズの戦い方の変化【横尾弘一「取材ノートから紐解く野球のミカタ」】