遅咲きの2人の「たいし」は、球界を代表するスラッガーへと成長するか?【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、遅咲きのスラッガー大田泰示と中川大志について考えてみた。
2015/06/05
松井秀喜の後継者として期待された大田
大谷翔平、藤浪晋太郎、森友哉。プロ野球には、高卒1年目で才能を発揮してスターダムに駆け上がる選手がいる。
一方で、将来を嘱望されながら芽が出ず、下積み生活を経てようやく1軍に定着して活躍しはじめる遅咲きの選手もいる。
今季、2人の遅咲きの選手が奮闘している。
同い年で誕生日は1日違い、同じ年のドラフトでプロ入りし、名前は2人とも「たいし」。
嘘みたいな話だが、その二人の「たいし」が今後のチームの命運を握ろうとしている。
1人目は巨人の大田泰示。1990年6月9日生まれ。東海大相模高校時代は甲子園出場はかなわなかったが、長打力と強肩で大型内野手として注目された。
2008年のドラフト1位で巨人に入団。球団はMLBに移籍した松井秀喜がつけていた背番号「55」を与えた。188cm95kgは、全盛期の松井とぴったり同じサイズ。恵まれた体、持ち前のパワー。高校の大先輩である原辰徳監督の覚えもめでたく、すぐにでも1軍で活躍すると思われた。
大田のキャリアSTATSだ。
1年目、2年目は「体験」レベルだったが、1軍でのプレーを経験。
3年目は5月に1軍昇格。三塁守備にやや難があるとされ、シーズン途中から外野での守備機会が増え、秋季キャンプで正式に外野にコンバートされた。
4年目の2012年は初の開幕1軍を果たし、プロ入り初本塁打も記録するが、定着とはならなかった。
もともと巨人は選手層が厚いうえに、毎年のように大型補強を行う。そうした先輩選手との競争に勝たなければ1軍に残れない。2013年オフには、背番号が「55」から「44」へ変更になった。
6年目の2014年は、主軸の阿部慎之助が不振で、アンダーソン、松本哲也、亀井義行など外野陣が戦線離脱。8月に昇格した大田は殊勲打を連発し、9月27日には初の4番に座るなど、ようやく大器の片りんを見せた。
そしてレギュラー定着が期待される今季、大田はオープン戦で左太ももを痛め出遅れた。しかし5月に昇格すると、打率3割をマーク。代打や守備固めなどの出場も多いが、1軍の戦力として実績を残しつつある。
1軍の成績はまだまだだが、2軍の成績を見ると、首脳陣が彼に大きな期待を寄せている理由がわかる。2軍のキャリアSTATSだ。太字はリーグ最多。
2軍で大田は不動の中軸打者で、二桁本塁打を5回も記録している。三振も多いが、空振りを恐れずに長打を狙う長距離砲であることを意味している。
2012年以降はOPS(長打率+出塁率)も強打者の指標である.750を超え、安定感が出てきた。
2軍での実績は十分に積み上げた。あとは1軍で結果を残すだけ。今季、大田にとって大事な1年となるだろう。