ハマらない「栗山マジック」。もう一度、気持ちをつくり直そう【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#108】
オールスター明けから好調だったファイターズが、8月に入り黒星街道まっしぐらだ。この悪い流れを断ち切るためにはどうするべきか?
2019/08/18
もう一度気持ちのつくり直しを
そのテンションの下がり方という話でいくと、第三に「栗山マジックのインフレーション」という問題も見えてくる。栗山さんはストーリー立てが上手だ。チームに物語をつくり、それをエネルギーに変える。まぁそれは「大谷翔平の二刀流」を代表作として、ファンなら思い当たることがいくつもあるだろう。基本スタイルは「こうなったら盛り上がるなぁ」というキャスティングをすることだ。2軍から上げた選手はすぐスタメン起用する。移籍してきた選手は古巣にぶつける。選手の出身地などをチェックして「ご当地起用」する。プロデューサー感覚なのだ。このお盆シリーズは高校野球シーズンと重なり、去年、甲子園で活躍した吉田輝星や万波中正を大抜擢した。うまくハマって活躍したら新聞の大見出しになるところだ。
それがハマらない。チーム状態が悪いときに高卒ルーキー起用は当然、リスクだ。そんなの百も承知で出してるんだが、結果は散々だった。で、散々でもいいという考え方もあるのだ。その失敗からワカゾーは学ぶ。どうせ連敗してるんだからワカゾーに経験を与えよう。
だがもちろんのこと、ワカゾーに経験を与えてる場合かというツッコミも飛んでくる。先に連敗を止めろ。いや、冷静に考えて選手層が薄いところにケガ人が出てしまったのだ。将としては用兵に苦しむ。そこで「天命がある」と清宮を4番に据え、「神様が決めたことをこちらが逃がさないように」と万波ををスタメン起用した。で、うまくいけばドラマだけど、うまくいかなかった。「栗山マジック」のインフレだ。
僕はチームに同じ方向を向かせることだと思う。ホームランのないチームは気持ちでつないで勝つしかない。その気持ちの部分だ。僕はオープナーも新シフトもいいと思う。「栗山マジック」も好きだ。だけどチームに納得させて、魂を入れなきゃやっぱりダメなんだと思う。今はテンションが下がっている。それは見ているファンの側も。
投打とも選手が足りず苦しむチーム。足りないなら補い合ってチームワークで戦うしかないだろう。同じ方向を向く。「方向を向く」は畳語かもしれないが、まぁいいじゃないか。お盆シリーズのファイターズは本当に元気のないチームだった。あんな元気のないチームは勝てないよ。だけど、1勝12敗ってほど弱いチームでもないだろう。もう一度気持ちをつくり直そう。ここから先、雑になったら何にも残らない。チームワークで戦って、そのブレイクスルーを若手に教えよう。
守り勝つ野球を。走塁と状況判断に優れた野球をもう一度【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#109】