守り勝つ野球を。走塁と状況判断に優れた野球をもう一度【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#109】
道東シリーズで3連敗を喫し、優勝争いから大きく後退したファイターズ。今年は様々な新しいチャレンジをしてきたが、結果的にこれまで積み上げてきた強きファイターズ野球を忘れ去ってしまっているように感じてならない。
2019/09/01
練習はウソをつかない
思えばファイターズは今年のキャンプ時、「(レアードに代わって)サードの定位置は誰が奪うか?」がホットな話題だった。コンバートの大田、近藤、淺間が「3人衆」と命名され競い合っていた。その陰でもちろん横尾もレギュラー奪取を狙っていたはずだ。で、夏の終わりにどうなったかというと、正三塁手と呼べる存在はひとりもいない。バッティングの調子を見ながらやりくりしているのだ。皆、あっちを守ったりこっちを守ったり。僕は「複数ポジションが守れる選手をつくる」発想も、「打者のデータに基づき思い切ったシフトを敷く」発想も別に嫌いじゃない。というより積極的に面白いと思う側だ。が、練習量が足りず、守備のレベルが下がってしまっては元も子もないと思う。大谷翔平の「二刀流」のとき議論されたことだ。2つポジションを担当するなら2倍練習しなければならない。
ファイターズが打ち勝つスタイルだったのは、狭い東京ドームを使っていた「ビッグバン打線」のときくらいだ。基本は投手力をベースにした守り勝つ野球だろう。その根幹が揺らいでいる。これは「エラーがつくミス」と、「エラー自体はつかないけど走者を残したり、進めてしまうようなミス」と両方がある。大体、準備が足りないか集中力が足りないかどっちかなのだ。シチュエーションを頭のなかで整理しないで、なんとなくプレーしてしまう。そういうのを見ていると「あぁ、目標がないチームなんだなぁ」と悲しくなる。弱いチームは惰性でプレーするのが習い性になるのだ。
僕は攻撃も守備も走塁を見るのが好きだ。野球は打つか打たないかばっかり注目されるけど、要は「ひとつでも先の塁を奪う」と「先の塁へ進めない」だ。走塁は(あるいは進塁阻止は)いちばんチームの野球観が出る。僕は「打てば点が取れるし、打たなきゃ取れない」という野球観はあんまり面白いと思えないんだ。
「足をからめた攻撃」という言い方をすると盗塁の話ばっかりになるんだけど、絶対そんなことないと思う。守備側からすると進塁をつぶすことで、失点を目減りさせていく。こういうのは惰性でプレーしてると出ないものだ。攻撃守備ともにめいっぱいアンテナを働かせて、状況判断していないと出て来ない。
清宮は「4番として打ててない」ところを文句言われるけど、僕の見立てでは守備意識も走塁意識もぜんぜん物足りない。ファイターズのアベレージに達していない。お山の大将で野球やってきたってことだなぁ。29日の帯広の試合、サードランナーとしてのスタートの遅さはびっくりした。練習と勉強だよ。がんばれ清宮。打てないことばかりに意識が向いていて、1軍で試合に出してもらってる意味がまだわかってない。
僕がパリーグでいちばん「先の塁を奪う」「先の塁へ進めない」を徹底してやってると思うチームはソフトバンクだ。あそこは強打者をぞろっと揃えて勝ってる印象だけど、実際は走塁と状況判断なんだ。ファイターズはそこでもだいぶ置いていかれてる。そこだけは自信があったんだけどなぁ。
今年はチームとして色々、新しい取り組みをしたんだけど、野球の質は落ちてしまった。これはもう一度しっかりつくり上げる必要がある。もしかすると主力選手がどんどん「卒業」し、若手と中堅でチーム編成している弊害かもしれないし、複数ポジションでみんな「二刀流」になってしまって、ザ・プロフェッショナルが減ったのかもしれない。
僕の言えることはシンプルなことだ。練習はウソをつかない。野球選手は何度でもそこに立ち返るしかない。
※ 8月31日の試合結果により、ファイターズはついに最下位転落、西武はソフトバンクとゲーム差0になった。野球の怖さである。たった1か月でこれほど運命が変わるとは‥。
渡邉、石井一、平沼、玉井……来季立て直しへ、今季いちばんの成長株は?【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#110】