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川相昌弘、ドラフト4位の肖像#4――「早稲田実業との対戦は望むところだった」

ドラフト四位指名―ドラヨンに結果を残している選手が多い。ドラフト一位指名は、その時点で同年代の野球少年の最前列にいると認められたことになる。その意味で、ドラヨンは、二列目以降の男たちとも言える。そんな“ドラヨン”で入団した野球選手を追った10/16発売の新刊「ドラヨン」から一部抜粋で公開する。

2019/10/17

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田崎健太



「何が何だかわからないうちに終わっていた」

 早稲田実業の眩さの前に岡山南は萎縮したのか、自滅する――。
 
 一回表、一死から内野安打。続く打者を投手ゴロに打ち取り、二塁で併殺のはずだった。ところが球を受けた遊撃手が落球。続く四番の板倉に安打を許し一点。五番打者にも安打を打たれて満塁となる。六番の荒木の三塁へのゴロを内野手が弾いて二点目が入った。川相は後続を打ち取ったが、五回にもエラー絡みで三点目を失った。〇対三の完封負けだった。
 
 
〈力を出せぬまま早実に寄り切られた岡山南の中で光ったのがエース・川相の力投。その川相、お立ち台でヒーローインタビューを受けていた早実・荒木を一べつして三塁側通路に引き揚げてくると、しばし無言。いかにも悔しいといった表情。
 
「今日は球も走っていたし、相手のヒットもいい当たりはなかった」「何が何だかわからないうちに終わっていた」…報道陣の質問にも感情を押し殺すようにポツリ、ポツリ。
 
「荒木君の投球にはうまみがあった。夏までにはスピードと変化球の切れをつけて、もう一度投げ合ってみたい」と、気の強いところをチラリ〉(『山陽新聞』一九八二年四月二日)
 

 
 川相は改めて荒木の投球をこう評する。
 
「無茶苦茶速い球っていうのじゃないんです。脱力するような感じから投げてきて、手元でボールがビュッと変化したりする。動くんです。だから、(スイングの)タイミングが遅れる感じがありましたね。畠山とかすごい速いピッチャーがいましたが、荒木はそうじゃない。ストライクゾーンの使い方が上手い。甲子園を知っているなと思いました」
 
 畠山とは池田の畠山準だ。川相や荒木と同じ年のこの速球投手はこの年のドラフトで南海ホークスから一位指名を受けることになる。
 
 ちなみに早稲田実業は次の準々決勝で横浜商業に一対三で敗れている。

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