ライオンズ・高橋朋己が目指す高み――「より完璧な投球を」無敗のクローザーの本音【中島大輔 One~この1球をクローズアップ】
交流戦を終えて、6月16日試合前時点で首位と3ゲームのライオンズ。今季、ここまで安定感ある戦いができているのは、勝利の方程式が確立されているからだ。特に9回の守護神・高橋朋己の存在がチームに落ち着きを与えている。そんな守護神の本音に迫った。今回クローズアップする場面は6月14日の東京ヤクルト戦だ。9回2死1塁、中村との打席、フルカウントからの11球目だ。
2015/06/16
ベースボールチャンネル編集部
立て続けのアクシデントも冷静に
一番の持ち味である140km台中盤のストレートをいくら投げ込んでも、なかなか決着がつかない。
3対2で迎えた6月14日の東京ヤクルト戦で、2死1塁、西武の守護神・高橋朋己はゲームを締めるのに苦労していた。
11球目に左腕が投げ込んだのは、右打者の内角をえぐるスライダーだった。中村悠平は手を出すことができず、ゲームセット。クローザーはようやく表情を崩した。
「相手は基本、全部真っすぐしか待っていません。初球をスライダーから入ったら、見逃すバッターが多いし。そう考えると、あそこでスライダーのサインを出してくれた銀さん(炭谷銀仁朗)にも感謝しますね」
1点差で9回に登ったこの日のマウンドでは、少しドタバタした。代打・比屋根渉のセンター返しが右足のふくらはぎに当たり、先頭打者に出塁を許す。
「時間が止まるのが嫌だった。どんどん行きたかったので」と、マウンドに駆けつけようとするトレーナーを制した。
1死から今浪隆博をファーストゴロに打ちとり、2塁に送球されてフォースアウト。ショートの永江恭平が1塁のベースカバーに入った高橋に投げて併殺を狙ったが、高橋は捕球をミスした際に右肩を痛めた。
西武プリンスドームに、嫌な時間が流れる。しかし、守護神は何事もないようにマウンドへ。
2死1塁。そして迎えたのが、最後の打者になる中村だった。
ストレートを6球続け、7球目の外角へのスライダーがボールとなり、そこから3球続けてストレートを投げ込む。11球目、フルカウントからスライダーを選択すると、相手にバットを振らせないまま勝利を手繰り寄せた。
高橋が自覚しているように、中村がストレート1本に絞っていたことは、見逃し三振という結果から推測することができる。それでも速いボールで押せるのは、よほど自信があるからだろうか。
「いや、あそこまでファウル、ファウル、ファウルで粘られると、1回タイミングを外すスライダーで、もしそれがファウルになったとしても、次に真っすぐでタイミングを外せるので。そういうのもあるかなと思います」