大打者・稲葉篤紀を作り上げた”全力疾走”――ファイターズに受け継がれるべき精神
10月5日(日)の東北楽天ゴールデンイーグルス戦は、ファイターズの今季レギュラーシーズン最終戦となる。この試合では今季限りの引退を発表した、稲葉篤紀の引退セレモニーなどメモリアルイベントが開催される。過去5人の監督に仕えた稲葉は、すべての監督を胴上げしている。プロ野球生活20年、勝利を知る大打者は、誰よりも"全力疾走"な男であった。
2014/10/04
稲葉篤紀という存在は、ファイターズにとっての大きな財産
もっとも稲葉は、〝必死に〟全力疾走を続けてきたわけではないはずだ。1試合に10回以上実践する全力疾走は、呼吸のような無意識に近い行いになっていたのではないだろうか。
あるとき彼は、全力疾走について「凡打してたらたら走ってしまうと、その後ろ向きな気持ちが尾を引いてしまう」と語っていた。
つまり全力疾走することで肉体を鍛えるだけでなく、気持ちをうまくコントロールしていた。全力疾走は、稲葉にとって心身を整えるためのシステムだったのだ。
稲葉の獲得を主導的に進めた当時のGM、高田繁氏は「彼の全力疾走するスタイルが好きだった」と語っている。
北海道に移転し、限られた戦力で戦うことを宿命づけられたファイターズにとって、小さなことを疎かにせず、機会を最大限に生かそうとする稲葉はこれ以上ない鑑だった。
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