寒さ、大雨、日没……季節のうつろいが物語る2019年のチーム成績の推移【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#117】
2019年のファイターズの試合を振り返ると、天候にまつわるエピソードが多々浮かぶ。
2019/12/22
極寒の中でのショートスターター
今年最後の入稿になる。12月は野球選手にとって貴重なオフであり、結婚式も集中するし、テレビ番組の収録やトークイベントも盛んに行われる。その一方、喧噪をきらって練習施設にこもったり、遠くへ自主トレ、オーバーホールに出かける選手もいる。我々ファンもちょっとのんびりだ。2月のキャンプ見学の予定を組んだり、来季の日程を見て、どう仕事を休みを取って遠征に出かけるか企てたりする……。
僕は暮れはその年の野球をしみじみ思い返す習慣だ。記録やノートを眺め、撮りためた写真を眺める。今年もファイターズと1年を過ごした。振り返ってみるのはしびれるような勝ち試合だけじゃない。例えば「あぁ、あの試合はバカ試合だったなぁ」「あの日はボロ負けして凹んで帰ったっけななぁ」というのもある。今季は8月以降、成績が急降下したからどっちかというとブルーな思い出のほうが多い。でも、負け続きでもやっぱり見捨てられなかった。負けてるんならオレが見て、つき合ってやらなくちゃなぁ「いいときだけの友達」みたいになっちゃうもんな。
それでも2019年シーズンは楽しかったのだ。僕は毎試合毎イニング、色々と思いを巡らせながら野球を楽しんだ。それをちょっとピックアップして、書いてみたいなぁというのが今回のコラムの主旨だ。別に何も目新しい情報は載ってない。そういうのが読みたい方はよそを当たってほしい。去りゆくファイターズの2019年シーズンにいっとき浸っていたい方だけご覧いただきたい。
2019年シーズンの思い出というと、何となく天候にまつわることが多いのだ。僕は4月初旬の楽天生命パークをまず思い浮かべる。春先の仙台デーゲームはいつも寒さは覚悟の上だ。が、この日(4月2日)は特別だった。試合開始の時点で2℃と言っていたはずだ。1回表、ファイターズは苦手・辛島に三凡。その裏だ。先発・加藤貴之がマウンドに上がったとき雪が降って来た。加藤は指先をユニホームのポッケに入れて温め、何とか投球する。が、視界をさえぎる横なぐりの吹き降りになってきた。たった4球(打者2人め)で試合中断。あのときの光景はすごかったなぁ。ファイターズは北海道のチームだけど、あれほどの雪のなかで試合をしたことがない。さすがに笑ってしまった。吹雪のプロ野球。
僕は選手の筋肉系のトラブルを心配した。どんなにウォーミングアップをしてもあんな寒さじゃすぐ身体が冷えてしまう。特にベテランは肉離れを起こしやすい。加藤も無理して投げて調子を崩さなければいいなぁと思った。肩をつくって登板し、4球で引っ込むのは経験ないだろう。
ところでこの試合、加藤はショートスターターとして初めて実戦のマウンドを務めたのだ。この日は雪がおさまってから3イニングを投げ、バーベイトにマウンドを譲った。「ショートスターター起用」の情報がなかったら、真っ先に故障が疑われたと思う。無失点で投げてる先発を3イニングで下げるなんて通常は考えられない。それを思うと、あの雪の日の加藤はその後、試行錯誤を重ねるファイターズの新・継投策の幕開けだった。ちなみに加藤は次の西武戦、その次のソフトバンク戦と3カード連続で予告先発に立っている。皆、今年のローテは読めないぞーと大騒ぎしていた。