今はレギュラーが遠くても……やっぱり期待大な万波中正の「スター性」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#121】
まもなく始まるオープン戦では選手たちが一軍入りをかけて、あるいはレギュラーの座をかけてしのぎを削る。この期間、万波中正はどんなアピールを見せてくれるのか、注目したい。
2020/02/22
思わず目が向かう、話題性のある選手
ファイターズは名護キャンプ終盤だ。真夜中にこれを書いているが、明ければ天皇誕生日の3連休、いよいよ今季のオープン戦(巨人、ヤクルト、DeNA3連戦)が始まる。2軍の国頭キャンプは打ち上がって、これからはサバイバルの様相だ。5年ぶりに1、2軍が揃って沖縄で春季キャンプを張り、メディア上で「メンバー入れ替えが容易」と言われてきたが、この先、オープン戦と教育リーグに分かれてしまえば、浮かび上がるチャンスを逸する者が出てくる。
僕もここまでの目線は金子みすゞ状態だった。「みんな違ってみんないい」だ。特にキャンプ序盤はただもうチームが集まって野球をやってくれてるだけで、じんわり幸福だった。南国の太陽を浴びて、マイチームが野球の練習をしている。ベテランがいて中堅がいて、ルーキーがいて、新外国人がいて、今年はガッツ小笠原がいる。ニヤけてしまうじゃないか。課題や目標はみんな違う。ビヤヌエバなんか超スローペースだ。オープン戦が始まるというのにまだ快音が聞けない。河野竜生は初登板からベストピッチに近い仕上がりだった。だけど、それぞれにいい。ケガさえしなければ前途に可能性がひらけている。
どうだろう、大概の野球ファンは(ひいき選手の動向は別として)キャンプ中、新戦力に目が行くんじゃないか。「今年の近藤健介は…?」と中心選手をチェックすることはあるが、力はわかっている。やっぱ、すげぇなぁー、としびれることはあっても「働くかどうか」なんて考えない。その点、新加入選手は「働くかどうか」だ。期待を込めて、つい見入ってしまう。それからもうひとつ、1軍の壁に挑戦するワカゾーだ。新聞がよく使う表現をするなら「アピールする」選手だ。存在をアピール。オレはここにいます、とアピールだ。
で、話をだいぶ端折るようだけど、僕はここまで名護キャンプの主役は万波中正だったと思うのだ。中田翔よりも近藤健介よりも、新外国人ビヤヌエバよりも、ドラ1サウスポー河野竜生よりも、みんなの視線を集めていた。僕は何で万波を見てしまうんだろうと不思議に思った。僕だけじゃない、そういう人が本当に多いのだ。球場に入って、何となくパッと目が向かう。「オーラ」とか「スター性」ということなのか。気がつくとみんな万波を見ている。万波を気にしている。
目が向かうだけじゃないんだなぁ。これは万波の実力やキャラクターを知ってる関係者であるほど顕著なのだが、やたらと話題にのぼるのだ。いじられキャラみたいなことでもあるんだけど、愛され、心配されている。彼が食い込まねばならないファイターズ外野陣はものすごく層が厚い。レギュラー級だけで近藤健介、西川遥輝、大田泰示だ。王柏融もいる。松本剛、谷口雄也がいる。ケガで出遅れてるけど淺間大基がいる。ユーティリティの杉谷拳士がいるし、もしかしたら清宮幸太郎が入るかもしれない。熾烈な競争なのだ。その分厚さを考えれば(少なくとも今季は)とても万波中正につけ入るスキはない。わかっているのだ。わかっているが、つい彼を目で追ってしまう。