佐々岡監督が強調する “一体感”とは。大エースの静かなる船出――カープ出身の指導者たちが語る「カープの育成術」#2
V奪還を目指し新体制となった広島東洋カープ。佐々岡真司新監督をはじめ、カープ出身の指導者たちが語った一流選手を育てる「カープの育成術」とは。カープ戦実況歴20年、長年カープを見てきた中国放送(RCC)アナウンサー・坂上俊次氏の新刊『「育てて勝つ」はカープの流儀』から一部抜粋で公開。
2020/03/06
監督・佐々岡真司の仕事は『見ること』から
185センチの大きな体はパイプ椅子と今季を競っているかのようであった。広島東洋カープ第19代監督・佐々岡真司の仕事は『見ること』から始まっていた。就任直後の秋季練習、室内練習場で腰かけると、ひたすらに野手の打撃練習を観察し続けていた。アドバイスを送るわけでもなければ、注文をつけることもない。ただ前かがみになって、打者のスイングを見つめていた。ウォーミングアップの時間帯も選手の近くに立ちながら、野手コーチらの話に耳を傾けていた。
570試合に登板、先発で100勝をマークすれば、守護神として100セーブも達成、沢村賞にノーヒットノーラン、派手な球歴を誇るスタープレーヤーだったにもかかわらず、実に静かな船出であった。実際、佐々岡真司という人物は、過度なパフォーマンスをすることもなく、スター然としたところもない。だからこそ、多くの人に愛され、周囲の力は、彼のもとに集まってきた。
「完投だってノーヒットノーランだって、みんなが守ってくれるからこそできることです。バックが守ってくれて、打ってくれる。そのおかげで勝つことができます」