よみがえる安仁屋イズム。受け継がれる練習量――カープ出身の指導者たちが語る「カープの育成術」#3
V奪還を目指し新体制となった広島東洋カープ。佐々岡真司新監督をはじめ、カープ出身の指導者たちが語った一流選手を育てる「カープの育成術」とは。カープ戦実況歴20年、長年カープを見てきた中国放送(RCC)アナウンサー・坂上俊次氏の新刊『「育てて勝つ」はカープの流儀』から一部抜粋で公開。
2020/03/09
「あれだけやったから長く野球ができたと思う」
投げ込みや走り込みに賛否両論はある。ともすれば、働き方改革の現代である。いわゆる伝統的な猛練習は分が悪い。安仁屋も、選手時代の気持ちを偽らない。
「ワシらも選手を辞めてから大事さに気づいたものよ。走り込みや投げ込みを、『やってきた』という感覚はなくて、『やらされてきた』というのが本音。でも引退してから感じた。あれだけやったから長く野球ができたと思う。やらずして上手くはならんということよ」
コーチ時代、すべての選手が安仁屋の方針に即賛成だったわけではない。
「佐々岡が入団したころ、投手コーチがワシで、彼は短い距離のダッシュを大事にするところがあった。確かに、体にキレを作るためにはダッシュが必要。でも、プロで長くやっていくためには、長い距離のランニングが必要と説いたことを思い出すね」
投げ込みも、走り込みもやる。そして、チームのために中4日も、完投も厭わない。そんな、かつての〝教え子〞が監督になった。〝投手の味方〞を自認する安仁屋からすれば、待望久しいカープでは53年ぶりの投手出身監督である。
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書籍情報
【内容紹介】
球団創立70年 強さの礎は、いつの時代も変わらず
名選手を輩出する土壌、脈々と受け継がれる“育成術”
カープ戦実況歴20年の名物アナウンサーが徹底取材
「猛練習」「工夫」「チームワーク」「愛情」
カープはいかにして、一流選手を育て上げるのか?
球界でも定評のあるカープの育成術に迫る
これまで、カープでは多くの選手が育ってきた。ドラフト下位指名であっても、猛練習でトッププレーヤーになった例も少なくない。外国人選手も、カープにやってきて才能が開花したケースが目立つ。 どんな人材が大きく成長するのか。また、カープはいかにして、一流選手を育て上げるのか。その方法論に迫るのが、本書の狙いである。
1960~70年代の猛練習。1990年代、野村謙二郎・金本知憲、前田智徳、そして佐々岡真司が背中で伝えたプロ意識。そこから、猛練習と工夫のハイブリッド世代。成長に近道はあるのか、遠まわりこそ学びの要素が多いのか、はたまた第3の道があるのか。カープの歴史を彩った指導者の話に耳を傾けたい。
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『「育てて勝つ」はカープの流儀』
【著者紹介】
坂上俊次(さかうえ しゅんじ)
中国放送(RCC)アナウンサー。1975年12月21日生まれ。兵庫県伊丹市出身。1999年に株式会社中国放送へ入社し、カープ戦実況歴は20年になる。スポーツ中継のほかに、ラジオ「それ聴け Veryカープ」、テレビ「Eタウンスポーツ」などを担当。また、中国地方をスポーツ関連産業で盛り上げるためのプロジェクト「ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク(スポコラファイブ)」の座長を務める。著書に『カープ魂 33の人生訓』『惚れる力』、(サンフィールド)、『優勝請負人』(本分社)、『優勝請負人2』(本分社)があり、『優勝請負人』は、第5回広島本大賞を受賞。現在「デイリースポーツ広島版」「広島アスリートマガジン」で連載を持っている。