ショートの座を射止めるのは石井一成か? 開幕延期をめぐる人間ドラマ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#123】
開幕延期となったプロ野球。選手は4月10日以降の開幕にあわせてコンディション調整に励む中、期間が延びたことで離脱している選手が復帰する可能性もあり、レギュラー争いにも大きな影響を及ぼす。
2020/03/21
打撃でも猛アピールした石井
オープン戦の期間、ファイターズのショートは石井一成、谷内亮太、平沼翔太の3人でまかなわれた。左ひざの故障で中島卓也が出遅れたのが一因だ。無観客試合は(ホームランボールだけでなく)ファウルボールもファンに抽選でプレゼントされる決まりだったため、中島卓也が出ていたらさぞやファンサービスになったろうと思うが、そうはならなかった。ファンは「ポジション争い」というまったく別の注目ポイントを与えられた。
守備の安定感に関して中島、石井、谷内は一級品といっていい。高校時代、投手だった平沼(一格落ちるという評価)でさえ、プロでスタメンを張れるレベルだ。大の中島卓也ファンを自認する僕としては「守備は中島!」と言いたいところだが、そこに大きな差はないと思う。問題はバッティングだ。
石井一成が素晴らしいのだ。去年、6番打者を務めた時期も目を見張ったが、今年のオープン戦は更に魅力を増している。小笠原道大コーチの指導のおかげだろうか、バットをしっかり振れるようになった。安定した守備に加え、長打力で猛アピールだ。僕は石井一成が3月20日、開幕スタメンに名を連ねるだろうと思った。その価値があると思った。
但し、谷内もオープン戦、打撃好調だった。まぁ、彼は右打ちの内野手という特徴があるから、相手がサウスポーを立ててきたときなど、使いでがある。打撃好調といっても石井のような長打力はないから、勝負強さや小技でアピールするしかない。バッティングのスケール感でいえば平沼翔太だが、どうだろうなぁ、平沼はビヤヌエバ、横尾俊建とサードを争ったほうが(左打ちという)強みを生かせる気がする。
というわけで急成長・石井一成なのだ。ついに今シーズン、ショートの定位置を奪うのか。僕は先ほども書いたように中島ファンだけど、フェアな競争なら大歓迎、ひいきの引き倒しはしない。それはかつての名ショート、金子誠が(きびしい生存競争に勝ち抜くことで)示し続けたものだ。プロの誇りだ。石井一成のキャリアのビッグチャレンジをしっかり見届けたい。
が、ここに開幕延期というファクターがかぶってくる。1、中島卓也は時間がもらえる。2、石井の打撃好調が維持できるか。早い話、新型コロナ禍でプロ野球の時計が止まってる間に中島卓也が復調するかもしれないのだ。そして、今、絶好調の石井のバッティングは次第に落ちてくるかもしれない。もちろん、そうではないかもしれないが、石井にとってはアンラッキーだ。3月20日のスタメンは「開幕戦」ではなく「練習試合」だった。
誰かのケガをきっかけに別の誰かがチャンスを掴む。それはプロ野球の歴史で繰り返されてきたことだ。石井一成の物語はどうなるだろう。開幕延期をめぐる人間ドラマはあちこちで巻き起こっているけれど、それはファイターズのショートにも言える。しかし、本当に4月10日開幕できるのだろうか。