韓国の至宝は、タイガースの至宝へ。来日1年目でセーブ王・呉昇桓が歩む絶対的守護神への道
今季、39セーブをあげて最多セーブのタイトルを確定させている阪神の呉昇桓(オ・スンファン)。韓国の三星ライオンズで長くストッパーを務め、通算277セーブを記録した"韓国の至宝〟は、その実力を示した。
2014/10/05
最強の守護神を目指して
真っ先に挙げられるのが、圧倒的なストレートを持っているということだ。それは球速に、はっきりと表れている。
今季活躍を見せた呉は、韓国球界で最速157キロを記録。日本でも154キロをマークしている。林は最速160キロ。宣も155キロをスピードガンに表示させたことがある。また、秀でていたのは、決してスピードだけでない。威力、伸びともに素晴らしく、それぞれ持ち球に違いはあっても、キレのあるスライダーやフォークなどの変化球を織り交ぜ、対戦する打者を圧倒する投球スタイルでゲームをピシャリと締めてきた。
さらに、林と宣はマウンド度胸も圧巻だった。ピンチの場面でも精神的に動じることはほとんどなく、「オレに任せておけ」と言わんばかりの、堂々としたマウンドさばきも強く印象に残っている。
2011年のシーズン開幕直後、当時ヤクルトに在籍していた林から、こんな話を聞いたことがある。この年のヤクルトは、前年までセットアッパーを務めていた増渕竜義(現・北海道日本ハムファイターズ)が先発に転向し、リリーフ陣の駒不足を不安視されていた。
そうした心配をぶつけると、「僕が2イニング投げればいいだけでしょ」と、ジョークをまじえて余裕の返答。ストッパーとしての強い誇りと自信を感じさせた。
今季、阪神のストッパーを務めた呉は64試合に登板し、2勝4敗39セーブ、防御率1.75という日本球界1年目としては文句のない成績を残した。
何より大きいのは、阪神の勝ちパターンを確立させたこと。終盤のゲーム展開に安定感をもたらし、2年連続となるチームのクライマックスシリーズ進出に大きく貢献した。
その一方で6度の救援失敗を経験した。
9月23日のDeNA戦(横浜)では9回に逆転サヨナラ本塁打を打たれるなど、日本球界からの痛烈な洗礼を浴びた。
しかし、宣銅烈、林昌勇らの偉大な先輩たちも入団間もない頃は同じ。宣は日本球界に適応できず、シーズン序盤には救援失敗を繰り返し、1年目は38試合で5勝1敗3セーブという期待にそぐわない成績に終わった。
林も入団年は33セーブをあげたものの、夏場以降は調子を崩し、(1勝)5敗を喫している。
同胞の先輩たちは失敗を糧として努力を重ね、徐々にチームメイトやファンの信頼を勝ち取り、その後チームの絶対的な守護神となっていった。それは呉にとっても同じ事が言えるだろう。
これからカープを相手に始まるポストシーズンの戦い。ストッパーとしての誇りと自信を胸に藤川球児と同様、タイガースの絶対的守護神を証明してみせる。