ペナントレース後半戦、チームの成績を左右する「救援投手」【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、各チームの救援投手についてだ。
2015/07/03
ベースボールチャンネル編集部
野球はやはり投手
今年のNPBは、パリーグが4強2弱、セリーグが大混戦で中盤を迎えた。
交流戦での大きな負け越しがたたって、3日時点でセには貯金があるチームは皆無。パは4球団が貯金をしている。
現在のセ・パ両リーグの戦力を主として投手陣から見ていこう。
投手成績を先発と救援に分けると、チーム事情がくっきりと見えてくる。
6球団の比較、QSは先発投手が6回以上投げて自責点3以下に抑えた試合、MLBでは「投手の最低限の責務」とされる。HQSは7回以上投げて自責点2以下に抑えた試合、いわゆる「好投」。さらにチーム打率も入れた。赤字はリーグ最高、青字はリーグ最低。平均投球回は先発投手が投げた投球回の平均。
楽天のリリーフ陣はリーグ屈指を誇るが……
まずパリーグだ。
ソフトバンクの先発投手はそれほど優秀とは言えない。防御率も平凡。しかし平均投球回はリーグ最長の6.48回。これは打線の援護点が多いことを意味する。多少の失点をしても、味方が追いついてくれるのだ。
逆に救援陣は防御率1位、クローザーのサファテ(18S、防御率1.05)、セットアッパーの五十嵐亮太(17H、防御率0.77)という盤石だ。
日本ハムの先発投手の防御率は、ソフトバンクと大差はない。しかしQSは最小。これはエースの大谷翔平(10QS)以外に信頼のおける先発が少ないことを表している。味方の援護もソフトバンクには劣っている。
救援陣はクローザーの増井浩俊(19S、防御率0.64)と抜群の成績。しかしセットアッパーの鍵谷陽平(14H、防御率4.43)と宮西尚生(14H、防御率3.27)、谷元圭介(11H、防御率3.07)の3人は10ホールド以上マークしているものの、今ひとつ安定感に欠ける。
西武は、ソフトバンクに次ぐ打撃力。この援護は大きい。先発が粘り、リリーフ陣へつなぐ形だ。特に注目すべき点は救援投手が最多の12勝を挙げていることだ。
チームを支えているのは、セットアッパーの増田達至(25H、防御率3.11)と武隈祥太(9H、防御率2.83)。武隈は救援で5勝。もつれる展開で打ち込まれながらも辛抱強く投げて、クローザーの高橋朋己(19S、防御率2.05)につないでいる。
ロッテも打ち勝つチームだ。先発投手陣はパで最も数字が悪い。それでも勝ち越しているのは、効果的に援護点が入っているからだ。救援陣は9回の西野勇士(19S、防御率2.10)、8回の大谷智久(20H、防御率2.54)と柱がいるが、他に信頼がおける救援投手がいない。最近はイデウンや藤岡ら先発で投げていた投手がリリーフへ回っている。救援陣の層の薄さをこれで解消できるか。
楽天の先発投手は、パ随一。12QSの則本昂大に8QSのレイ、塩見貴洋と信頼のおける先発投手が揃っていた。しかし打線が6球団で最も弱く、援護点を供給できないため、勝利に結びついていない(レイは6月から中継ぎに転向)。
救援投手も驚異的な活躍を続ける松井裕樹(18S、防御率0.51)、福山博之(17H、防御率2.08)、青山浩二(15H、防御率3.08)と充実しているが、そもそもセーブ、ホールドシチュエーションで救援投手が登板する機会が少ないため、宝の持ち腐れになっている。
意外なことにオリックスは、HQSが一番多い。ディクソンが10HQSと極めて質の高い投球をしている。しかし10HQSの勝敗は6勝3敗。援護が少ないのがわかる。
そして昨年、チームをポストシーズンに押し上げた救援投手陣が壊滅的な状況だ。昨年チームを支えた4人が軒並み故障や不調。佐藤達也(7H、防御率3.38)、平野佳寿(8S、防御率3.86)、馬原孝浩(2S、防御率7.56)、比嘉幹貴(1H、防御率27.00)と総崩れだ。これまで塚原頌平(12H、防御率2.10)が奮闘しているが、救援投手陣の不調こそ今季、オリックスが低迷する大きな要因だ。