相手投手との間合いの奪い合いで勝負 パリーグ優勝を決めた松田の一打
9月以降苦しみながらも3年ぶりにパリ―グを制したソフトバンクホークス。優勝を決める一打を放ったのは選手会長・松田宣浩だった。クライマックスシリーズでも勝負強い打撃を期待される松田だが、自身の打撃理論は非常に独特だ。
2014/10/06
打席では自分のタイミング……間合いを大切にしている
ホークスVSバファローズの10・2一大決戦は、延長サヨナラの劇的な幕切れで、ホークスが3年ぶりのリーグ制覇を果たした。
しびれる勝負に決着をつけたのは5番松田宣浩のバット。
10回裏一死満塁、カウント1-2から、バファローズ比嘉幹貴のスライダーを左中間へ弾き返した。
最高の場面で飛び出した一打は、見事というほかない。ムードメーカーでもある選手会長は、天然系キャラクターで知られるが、その打撃理論もかなりユニークだ。
まず、自ら「打席の中であんなに動く選手は他にいない」と認めるほど、スイング後の動作が激しい。ファールを打つたびに、右足でケンケンしながら打席を外すシーンは、ホークスファンにはお馴染みだ。軸足を固めながら、スイング後もその場に止まっておく。
そういう打撃フォームのセオリーからは外れている。
ところが松田は「僕は独特の打ち方ですから」とお構いなし。では、打席の中で何を一番重要視しているか? それは、「タイミング」だという。
「速い球だろうと、ゆるい球だろうと、また、高目だろうと、低目だろうと、タイミングさえ合えば、どんなボールでも打てるし、見逃すこともできる。だから、大切なのはタイミング……自分の〝間〟と言い換えてもいいですね。打席の中では常にそれだけを意識しています」
ポイントは、自分の間合いで打てるかどうか。勝負は、相手投手との間合いの奪い合いで決する。
「ど真ん中の甘いボールでも、こっちの気が少しでも緩んでしまっていて、逆に相手のボールに気持ちが入っていれば、差し込まれて詰まらされてしまう。反対に焦って前で捌きすぎても、ボテボテのゴロに打ち取られてしまう。そういう感覚の勝負です」
ここでいう「間の奪い合い」とは、単純に「投手が投球間隔を変えてタイミングをずらす」といった、物理的な時間だけを指すのではない。どちらのペースで勝負が進むのかという意味だ。
間合いの制し合い……まるで真剣勝負に臨む江戸時代の剣豪のようだが、松田は常にそんなイメージを持ちながら打席に立っている。