元西武・秋山翔吾が欲しがった“データ”――球界屈指の安打製造機は独特の感性を持った選手だった
野球界における参謀の存在意義 “名将の思考”と“今の時代に求められる指導者像”を記した橋上秀樹氏最新刊『常勝チームを作る、最強ミーティング』から原辰徳さんとのエピソードを第4章「戦略が必要な選手、必要のない選手の違いとは」から一部抜粋で公開です。
2020/05/18
調子も独特なバロメーターで判断していた
口頭では説明できないデータを欲しがる選手もいる。このことを西武の秋山翔吾から学んだ。彼はそれまで私が見てきたどの選手にもタイプが当てはまらない、独特の感性を持った選手だった。
西武では個々の選手にタブレット端末を渡して、そこから映像やグラフなど、自分にとって必要なデータを選んでもらうという形をとっていた。そうした中で、秋山は相手ピッチャーの球種や相手バッテリーの配球ではなく、ピッチャーとのタイミングの取り方に興味を示したのだが、正直これには驚いた。これまで彼のような視点でデータを欲しがる選手はいなかったからだ。
また、秋山が独特な感性の持ち主であるひとつの例として、バッティング練習時の「好調かどうかを判断するバロメーター」がある。普通ならば、外野に大きな飛球を飛ばす、あるいはライナー性の打球を飛ばすといったように、フィールド内にどんな打球を飛ばしたかで好不調を判断する場合が多い。
だが、秋山は違った。三塁の観客席にファールボールを飛ばすことができたら、バットの出がスムーズになって、体が一定の状態でボールを見てとらえていると判断しているようだった。もちろん三塁の観客席にファールボールを飛ばせたからと言って、すべて納得しているわけではない。観客席の上のほうに飛ばして納得している場合もあれば、下のほうだと「あれ?」と首をひねって、考えている姿もしばしば見受けた。おそらく彼の中では「何かが違う」と感じるものがあったのだろう。