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無敗の田中将大を攻略。名参謀が明かす、日本シリーズで巨人が徹底した“捨て身”の戦法

野球界における参謀の存在意義 “名将の思考”と“今の時代に求められる指導者像”を記した橋上秀樹氏最新刊『常勝チームを作る、最強ミーティング』から原辰徳さんとのエピソードを第4章「戦略が必要な選手、必要のない選手の違いとは」から一部抜粋で公開です。

2020/05/22

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日本シリーズで徹底した“田中対策”

 その年、私が戦略コーチを務めていた巨人もセ・リーグ連覇、さらにはCS(クライマックスシリーズ)も勝ち抜き、楽天と日本シリーズで相対することとなった。
 
 楽天でもっともマークすべきは、当然連勝をマークした田中だった。チームとしても、楽天に勝つということ以上に、田中を打って勝ちたいという気持ちのほうが強かった。
 
 私が田中対策として選手に出した指示は、次のとおりだった。
 
「コントロールの精度が高いし、いろんな球種を追いかけたところで、まず打てないだろう。それならば『このコースに投げてくる』と、ピンポイントに的を絞って勝負していこう」
 
 まさに捨て身の戦法をとっていこうと考えていた。ピンポイントに絞るべきボールは、それこそありとあらゆる状況を想定し、ある選手には、
 
「アウトコースのスライダーは捨てて、カウント球として投げてくるストレートを狙っていきなさい」
 
 と指示をし、またある選手には、
 
「ひざの高さのボールはすべて見逃せ。そのゾーンからはストンと落ちるフォークボールを投げてくることが多い。だから振る必要はない」
 
そう断定して伝えるようにしていた。そうして最後には必ず、
 
「狙いが外れたら『ごめんなさい』でいい。そう割り切って作戦を徹底させていこう」
 
 とも話しておいた。バッターは作戦面で決めごとを作っていても、バッターボックスに入った瞬間、「打ちたい、打ちたい」と焦る気持ちが出てくることもあれば、カウントが不利になると、「次に来るボールはなんだろう?」と、心理的に焦って冷静さを失うこともある。だからこそ、「失敗することもあると思っているから」と伝えると、選手は落ち着いてバッターボックスで相手ピッチャーと勝負できるのだ。

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