「おじさんの一言で野球を始めるきっかけに」。横浜DeNAベイスターズ・加賀繁が模索する永遠のテーマ
現役時代、先発・リリーフとフル回転し、ベイスターズの投手陣を支えた加賀繁さん。現在は『野球振興・スクール事業部』の球団職員として、試行錯誤しながら、子どもたちに野球の魅力を発信すべく、日々奮闘している。
2020/05/27
YDB
最初はデスクワークに苦労
「これは永遠のテーマなのですが……」
加賀繁は、ちょっと照れた表情を見せながら確信した口調で次のようにつづけた。
「子どもたちにいかに野球の面白さや楽しさを伝えていくことができるのか。それをこれからも変わることなく模索していきたいと思っているんです」
右サイドスローの切り札――2009年のドラフト会議で2位で入団し、先発やリリーフとしてどんな場面であってもチームの勝利に尽力をしてきた加賀。口を真一文字に結んだ精悍な顔つきで打者に向かっていく姿は、今でも思い出される。とくに圧倒的に抑え込んだ元ヤクルトのウラディミール・バレンティンとの数々の対戦は、ファンの間でも語り草である。2018年シーズンをもって9年間の現役生活を終えると、現在は球団職員として縁の下から横浜DeNAベイスターズを支えている。所属部署は『野球振興・スクール事業部』だ。
「主な仕事内容は、未就学児から小学6年生までで構成されているベースボールスクールのコーチや運営になります。あと、週末に開催している神奈川県内の小中学生を対象とした野球教室で、指導者の球団OBの方々のサポートなどですね。え、大変な点ですか? 野球を教えるということに関しては苦にならないのですが、最初はやはりデスクワークに苦労しましたね。文章の書き方や話し方をまわりの方々から教えていただくなど、一からの勉強でした。まあ今でも苦労はしていますが(苦笑)」
現役生活を終えてのセカンドキャリア。慣れぬこともまだ多いが、冒頭で語っていたように加賀は子どもたちに野球を指導することに生きがいを感じているという。ただ昨今、巷で言われているように子どもたちの野球離れが進んでおり、現場を肌で感じている加賀としてもそれが気になっている。
「うちの息子ふたりが地域の少年野球チームに所属しているのですが、体験でやってくる子どもたちの親御さんと話すと、野球にするかサッカーにするか悩んでいるといったことをよく聞くんです。少年野球は“お茶当番”など親御さんの負担が大きくなることもあって二の足を踏んでしまっているような気がしますね。もちろん、うちのベースボールスクールやジュニアチームではそういった慣習はありませんが」
加速する野球離れ。加賀は職員になってから、どうすれば野球の楽しさを伝えられることができるのか考えに考え抜いてきたという。
「昨年、1年間経験してわかったのは、同じ伝え方をしても全員が全員、理解できるというわけではないということです。子どもたちは年齢も違えば、性格も違います。しっかり相手を見て、どう言えば理解できるのか、野球の楽しさが伝わるのか、しっかりと考えなくてはいけない。上手くプレーできたら褒めてあげて、できなければどうして上手くいかないのか噛み砕いて教えてあげる。僕としては、コーチの名前なんか覚えなくていいから、このおじさんに言われたから、ちょっと野球をやってみたいなって興味をもってもらえるだけでもいいし、いいきっかけ作りをしたいと思っているんです」