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セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1952年編~

2020/06/03

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Getty Images, DELTA・道作



1952年のセントラルリーグ

チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点差
読売  120 .692 650 389  261
大阪  120 .664 600 400  200
名古屋 120 .636 569 430  139
大洋  120 .483 519 548  -29
国鉄  120 .417 410 526  -116
広島  120 .316 365 573  -208
松竹  120 .288 326 573  -247
 

 

 打率.353で首位打者を獲得した西沢道夫(名古屋)が総合打撃評価のwRAAでも47.1で初の1位となった。順位は変われども常連組が上位を占めている。順当なシーズンはあまり変わった結果は紹介できないものだが、このシーズンはwRAA45.3で2位の杉山悟(名古屋)が極めて珍しい記録を達成している。

 この年杉山は110安打を放っているが、内訳は単打49に対し長打61(二塁打29、三塁打5、本塁打27)。リーグ戦が100試合レベルになって以後初めて「単打<長打」を達成している。それも長打の方が12本も多いという異様な数字だ。このように記録を収集していると、年代や試合数、打率や安打や本塁打を見れば、総合打撃指標の値がどの程度になるか大体の想像がつくものだが、杉山については想像を超える奇妙な値となっている。
 
 全安打数に占める長打の割合は年によって動くが多くても3割を少し超える程度。そもそも安打というのは基本単打になるものだ。特に長打の少ないこの年は25%、ちなみに2019年のNPBで30.5%となっている。この長打超過12の記録はこの年代にはあり得ないオーパーツ的な記録である。
 
 後年、「長打>単打」を記録した第2号となる王貞治(読売)は、キャリアを通してこの記録を7回達成するが12本には届いていない(四球と本塁打ばかりだった印象がある)。ラルフ・ブライアント(近鉄)らの長打特化型でもこの記録には届かず、結局20世紀中は破られずに残ることとなった。2001年にスコット・マクレーン(西武)が長打超過15本を記録。杉山の記録は破られることになる。
 
 ちなみに2009年には中村剛也(西武)が長打超過29本という、現代の目で見ても驚愕の記録を残している。これはアンタッチャブルに近い記録だろう。中村はほかにも驚異的なスタッツがあり、長打に特化した才能は史上最高と見られる節が多々あるが、その件は当該年代の記事で扱いたい。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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