自己最遅速のカーブで最大59キロの緩急差 則本昂大、「3年目の進化」の“兆し”
3年目を迎えた楽天のエース・則本昂大。開幕から苦しんできたが、夏場に来て進化の兆しを見せ始めた。キーワードは『緩急』だ。
2015/07/12
年々遅くなるカーブ
象徴となる対決があった。6月30日QVCマリンで行われたロッテ戦だ。則本は6回途中9安打8失点で敗戦投手にはなったものの、4点を追う5回2死走者なしデスパイネとの対決は、今後のピッチングにヒントをもたらす5球勝負になった。
94キロカーブの直後に153キロのストレートをズバッと投げ込んだ則本。
実に59キロの緩急差を生み出すなど、ストレートとカーブのコンビネーションで圧倒した。ちなみにこの59キロはプロ入り後、則本が見せた最大の緩急差になった。152キロ直後のカーブは102キロで緩急差50キロを生み出し、初回先制3ランを則本から放ったキューバの強打者を完全に手玉に取り、イージーな左飛に凡退させた。
2ストライク以降のカーブによる相手打者打席結果を一覧表にしてみた。嶋の骨折離脱により小関とバッテリーを組むようになった6月下旬から増えている。小関も則本の投球をうまく引き出していると言えそうだ。
カーブで奪った三振は4個。204個を記録した昨年の奪三振、カーブで奪ったのはわずかに3個で、すでに昨年数を上回った。注目したいのは、スコアリングポジションに走者を背負った状況でもカーブを使っている点だ。コントロールすることが難しい緩い球を、T-岡田や柳田など一発長打のある好打者相手に、追い込んでから決め球として用いる。相当な勇気を必要とする局面で、臆することなくしっかり投げ切り、三振に取っている。
則本といえば、好調時には150キロ超えを平気で連発してくるストレートや、奪三振王を手繰り寄せた落差のあるフォークボールに注目が集まりがちだ。しかし、カーブも大きな武器だ。
驚くことに、そのカーブの平均球速が年々遅くなっている。1年目は115.1キロ、2年目は108.4キロを計測したスピードは、今季107.0キロと3年間の中で最も遅い。90キロ台のカーブも目立ち、前述したデスパイネに投じた94キロは自己最遅投球になった。
90キロ台のカーブがあれば、緩急も大きくなり有効になる。ダルビッシュのように、もっと自在に使いこなすことができれば、投球の幅が広がり近い将来、沢村賞も視野に入る大エースへ成長できるはずだ。