「エース級」マルティネス、完全復活の兆し。日本球界で成功をつかみとれるか?【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#126】
ファイターズの先発陣で明るい兆しといえば、マルティネス・バーヘイゲンの両外国人投手に目途が立ったことだ。特に昨シーズンは故障で1年間棒に振ったにもかかわらず、契約が切れなかったマルティネスは1年目を彷彿させる投球を見せ始めている。
2020/07/26
本来の姿に戻ってきたマルティネス
7月の博多シリーズの収穫のひとつとして外国人投手の充実を挙げたいのだ。同シリーズではソフトバンク戦8回戦にマルティネス、9回戦にバーヘイゲンが先発を務めた。これがともに素晴らしい出来だった。今年は6連戦が延々続く投手にとっては過酷なシーズンで、試合のつくれる先発の駒(それもなるべく長く投げてリリーフの負担を減らしてくれる駒)は各球団ノドから手を出るほど欲しい。ファイターズは有難いことに先発ローテ枠2つを信頼できる外国人で埋めることができた。これは大変な幸運だと思うのだ。
バーヘイゲンは2勝目を挙げて、日本でやっていけるメドが立った。ソフバン9回戦でポイントが高かったのは立ち上がり制球が不安定で先に失点し、そこから内容を修正してみせたことだ。投手には「160キロの速球を投げられる能力」とか「えぐいナックルカーブを投げる能力」とか、色々な能力があると思うが、「試合のなかで投球内容を修正できる能力」はとても重要だと思う。これを持ってない投手はひとつ歯車が狂うと試合を壊してしまう。どんなスピードボールを持っていても信用できない。愛称「バーギー」はチームメイトの信頼を得て、日本球界で成功をつかみつつある。
新参のバーヘイゲンに比べると、実績のあるマルティネスはスタートラインが少々違う。来日1年目の2018年、10勝11敗でローテを守りきり、既に「試合のつくれる先発」の信頼は得ている。だからこそ右前腕を痛め稼働しなかった2019年も契約を切らず、球団はその復活を待ち続けた。ひと昔前の日本プロ野球なら、手術して1シーズン投げられないとわかっている外国人投手をロースターに残したか微妙だと思う。
今季のマルティネスは本調子から遠かった。ブランク明けのシーズンだ。フィットするまでに時間がかかる。開幕前の練習試合からずーっと傾向は同じで、コントロールが甘い。高めの球を狙い打たれていた。それが今回の博多シリーズではすっかり改善されていた。一球一球のコントロールに神経が通っている。勝ち負けをこえて今シーズンのベストピッチだ。
僕はマルティネスの復活がいちばん気にかかっていた。彼はチームの投手力事情によっては、エースローテでまわってもおかしくない実力の持ち主だからだ。ファイターズは「エース級」と評していい投手が3人いて、有原航平、上沢直之、ニック・マルティネスなのだが、このうち2人が故障上がりというのが今季のミソだった。上沢は軸足のヒザの骨折だから、ケガ自体は癒えても投球バランスを取り戻すのに時間が必要だ。マルティネスがどこまでやれるかにチームの浮沈がかかっている。